ネロとキリエが眠りについた後、風呂から上がったリアラはソファに座って明日の予定について考えていた。
(明日の朝ご飯はパンにしようかな…となると、明日朝早くに買いに行って…その前に少しでも鍛錬したいな…)
リアラが考えに耽っていると、誰かに後ろからポン、と肩を叩かれた。
「何考えてんだ?」
「ひゃあっ!」
驚いてリアラが後ろを振り返ると、風呂から上がったばかりであろうダンテがこちらを見下ろしていた。
「ダンテさん…びっくりした…」
「悪い悪い」
苦笑しながら詫びるダンテの髪はちゃんと拭いていないのだろう、いつもと同じように滴をポタポタと落としている。それを見たリアラはため息をつき、ダンテに言う。
「ダンテさん、髪はちゃんと拭いてくださいっていつも言ってるじゃないですか。風邪ひきますよ」
「俺は頑丈だからな、これくらいじゃ風邪なんてひかない」
「そういう問題じゃないですよ。だいたい、床だって濡れるし…」
こう言ったところで、ダンテが聞いてくれないことはわかっているのだが。再びため息をつき、リアラは自分の隣をポンポンと叩く。
「ほら、座ってください。ちゃんと拭きますから」
「はいはい」
子供を窘めるようなリアラの口調にダンテは笑うと、前に回り込み、ソファに座る。リアラは立ち上がりソファの後ろに回り込むと、ダンテの肩からタオルを取り、優しい手つきで髪を拭き始める。
「痛くないですか?」
「ん、大丈夫だ」
いつもやっていることなのに必ず気遣いの言葉をかけてくれるリアラに、ダンテは微笑んで答える。しばらく手を動かすと、乾いたのを見計らってタオルを離し、リアラはダンテの髪を手櫛で整える。
「はい、終わりましたよ」
「ああ、ありがとな」
「どういたしまして」
たまには自分でやってくださいね、と言い、リアラがタオルを洗濯籠に入れるために風呂場へ向かおうとすると、ダンテが呼び止めた。
「ああ待て、リアラ。…聞きたいことがある」
「聞きたいこと、ですか?」
「ああ。そこに座ってくれるか?」
真剣なダンテの目に何かあると感じたリアラは、その言葉に従い、ダンテの向かいに座る。ダンテはリアラを見つめると、静かに口を開いた。