食事を終え、後片付けも済ませたリアラは身だしなみを整えてゼクスの部屋へ向かう。
(渡したい物って、なんだろう…)
首を傾げながら、リアラはゼクスの部屋まで来ると扉をコンコン、とノックする。
「父様、私です」
「入りなさい」
「はい」
返事をし、リアラが扉を開けると、小さなテーブルに肘をつき、ゼクスはこちらを見ていた。
「そこに座りなさい」
「はい」
ゼクスの指差した椅子に座ると、リアラは目の前の顔を見上げる。
「それで父様、渡したい物って何ですか?」
「ああ、これだ」
そう言ってゼクスが手を掲げると、青い光が集まり、やがてある武器の形になった。目の前に現れた物に、リアラは目を見開く。
「父様、それは…」
それは槍だった。水色の柄の両端に刃をつけ、柄の中心には青い石が嵌め込まれている。そして、その左右はレイザードと似たようなデザインの装飾が施されていた。
双槍・ディアクト。ゼクス自身の魔力で具現化された武器であり、彼の長年の相棒だ。
ゼクスはディアクトをリアラに差し出す。
「これを、お前に託す。鍛錬して、使いこなせるようになりなさい」
「でも、それは父様の…」
「デビルハンターのお前は、私より戦うことが圧倒的に多い。なら、お前がこの武器を使うべきだ」
「……」
「今ならわかる、ダンテとバージルに自分の武器を託したあいつの気持ちが。…受け取りなさい」
ゼクスの言葉に促され、リアラはそっとディアクトを受け取る。
「昔、何度かそれを使わせたし、私の使い方を見ているから、使い方はわかるね?」
「…うん」
「…心配するな、お前はこれを使いこなせる。それに、ディアクトだってお前を認めている」
でなければ、とっくの昔にディアクトはお前を拒否している、とゼクスは笑って告げる。ディアクトを握りしめ、リアラは頷く。
「…うん」
たくさん鍛錬して、早く使いこなせるようになろう。父の託してくれた気持ちも、大事にしながら。
リアラの決意が聞こえたかのように、部屋の明かりを受けてディアクトはキラリと光った。