ようやく泣き止み、疲れたのかやがて落ちるように眠りについたリアラを抱き抱え、ダンテは自室に向かう。部屋の扉を開け、ベッドに近づくと、その上に彼女をそっと下ろす。
一度リアラの頭を撫でてやると、赤いコートと皮の手袋を脱ぎ捨て、ダンテは彼女の隣に横になった。そして、彼女をぎゅっと抱きしめる。


(…頼むから、あまり自分を責めないでくれ)


十年前、自分は彼女の言葉に救われた。マレット島で兄であるバージルを殺し、罪の意識に苛まれていた時、自分の話を聞いた彼女はこう言ったのだ。


『…きっと、バージルさんはお兄ちゃんに会えてよかったと思ってますよ』


自分には敵意ばかり向けていた兄。だが、兄弟であり、同じ家族なのだ。そう思ってくれていたかもしれない。
そう思うと何かが込み上げてきて、唇を噛みしめ、俯いた。彼女の手前、泣くことなんてできなかったから。
でも、心の中では大粒の涙を溢していたと思う。


(あの言葉で、俺はだいぶ救われたんだ)


赤みの残るリアラの目元を指で撫で、再びダンテは彼女を抱きしめる。


(…どうか、今夜だけは)


今夜だけは、彼女が辛い夢を見ませんように。
そう願って、ダンテも眠りについた。



***
2014.1.22




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