「あれから二人でリアラとフィーリアを家に連れて帰ったわ。急激に力を使った反動で、リアラは三日間眠り続けた。フィーリアはすでに死んでしまっていて、リアラが目を覚ました時にはゼクスと二人で城の衛兵墓地に埋葬した後だったの」
「……」
「リアラもフィーリアも胸から腹部にかけて無数の針で刺されたような跡があって、すぐ城の外で見たあの悪魔だと思った。エヴァが殺された時のように、ムンドゥスの配下がやったんだと思ったわ」
何かを堪えるように、レイザードは続ける。
「ゼクスはあの日に行かせた自分を責めたし、私は間に合わなかった自分を責めた。だけど、一番自分を責めたのは…リアラなのよ」
「……」
「すぐ近くにいたのに何もできなかったこと、自分で守ると言ったのにフィーリアを守れなかったこと、挙句に暴走してゼクスを傷つけたこと…全てがリアラにのしかかって、端からみていて壊れそうだった」
ただ、とレイザードは続ける。
「あなたに会ってからフィーリアの仇を討つと決めたその子は、数年かけて独自の戦い方を模索した。銃を使ったり、今のような戦い方をするようになって、15歳の時に私と戦って私に力を認めさせたの。そして、私はその子の魔具になった」
そう言い、レイザードはリアラを見つめる。
「ただ、あの時のリアラは悪魔への憎しみでいっぱいで…正直、危ういと思った」
だけど、とレイザードは言い、目を細める。
「リアラは私に、『人は傷つけない』って言ったの。罪のない人は傷つけない、って。あれからずっと、リアラはその約束を守ってくれてる」
だから、私はその子についているの。レイザードはそう言った。
話を聞き終え、ダンテは頷く。
「そうか…」
それ以上、何も言えなかった。自分が思った以上に辛い出来事にあっていたリアラに、同じ経験をしている身として彼女の気持ちがよくわかるから。
「お願い、その子を責めないでやって。自分の未熟さを隠そうとしたわけじゃない、ただ、あなたに見られるのが怖かったのよ」
「ああ、わかってる。…話してくれてありがとう、レイザード」
「レイでいいわ、リアラも私と話す時にそう呼ぶから」
レイザードが微笑んでそう言った時、リアラの指がピクリと動いた。
「ん…」
小さく声を漏らし、リアラは目を開ける。そして辺りを見回すと、小さく呟いた。
「ダンテさん…レイ…」
「起きたか?」
優しく頭を撫でるダンテに、申し訳なさそうに瞼を伏せるリアラ。
レイザードは窓から身体を離すと、リアラに声をかける。
「リアラ」
リアラが顔を上げる。
「ダンテに頼まれて、過去のことは話したわ。後はあなたがきちんと話しなさい」
そう言うレイザードの声は凛としながらもどこか穏やかで、親が子を諭すようだった。
「うん…」
素直に頷くリアラに微笑むと、レイザードの身体は青い光に包まれる。そして光の玉になってリアラに近づくと、いつものブレスレットの姿になり、リアラの両腕に収まった。
しん…と室内が静まり返る。