「リアラを、か?」
ダンテは彼の娘の名を呟く。
先程ダンテ自身が口にした通り、ゼクスには娘―リアラがいる。
リアラが生まれたのは自分がゼクスの元を去ってから数年経った後だったため、自分とは歳がかなり離れているし、顔を合わせたのも数えるほどしかない。
だが、ダンテはリアラのことをよく覚えていた。彼女と会ったのはほんの数回だが、その一回一回がとても印象的だったからだ。
特に、彼女が生まれた時のことはよく覚えている。彼女の母親に「抱いてあげて」と言われ、戸惑いながらも抱いた自分を大きな目で見つめていた彼女。
娘が生まれて笑顔を浮かべる二人を見て、自分が生まれた時もこんな感じだったのだろうかと思ったものだ。
「助けてほしい、ってのは一体どういうことなんだ?」
ダンテは再び問いかける。九年、自分がフォルトゥナに訪れなかった間、ゼクスとリアラに一体、何が起こったのか。ゼクスは静かに口を開いた。
「一ヶ月前にフォルトゥナで、お前とあの青年で魔剣教団を打ち倒したのは覚えているだろう」
「?ああ」
ダンテは首を傾げながらも頷く。なぜ今、その話が出てくるのか。
ゼクスは続ける。
「…三ヶ月前、私とリアラは教団に捕まり、実験材料にされていた」
「!」
思ってもみなかった言葉に、ダンテは目を見開く。
「フォルトゥナ城の地下に造られた奴等の研究施設を見ただろう。あそこに連れて行かれ、アグナスという男の実験に私達は利用された。リアラは閻魔刀復元の実験に、私は小地獄門安定の実験に」
「アグナス…」
ダンテは眉をひそめる。 熱心な教団信者であり、研究者であり、魔皇サンクトゥスと共に神の計画を行った男。
最後にはダンテによって倒されたが、道さえ違えていなければそれほど悪い奴にはならなかっただろうに。
「その後二ヶ月間ずっと、私とリアラは実験材料として利用された。だが、あの事件が起こる一ヶ月前に教団に入信したグロリアという女が魔具を持っていてな、その魔具を起動装置にすることによって小地獄門はだいぶ安定するようになった。そのため、私は用済みになって解放された」
「ちょっと待て、ならリアラはどうなったんだ?」
思わずダンテは口を挟む。その言葉に、ゼクスは顔を歪めた。