―十年前、まだフィーリアが生きていた頃。
「じゃあ、いってくるわね。見回り、がんばって」
「ああ。リアラ、母さんのことを頼む」
「うん。ちゃんと守るから、父様も気をつけてね!」
「ああ、わかっているよ」
ある冬の昼下がり、ゼクスは玄関で妻と娘を見送っていた。
わけあって山の麓に移り住んだがまだフォルトゥナ城に住んでいた時期の長いフィーリアは、時々城に行き、そこで思い出に浸る時間を過ごすことがあった。悪魔に襲われてはいけないと、いつもゼクスがついていっていたのだが、リアラが13歳になり、自分の力でこの地の一通りの悪魔を倒せるようになったため、今回はリアラがついていくことになったのだ。
父親に認めてもらったためか、リアラは嬉しそうで、それを微笑ましく思いながらもゼクスは気を抜かないようにと注意した。
「母様、今日は寒いからちゃんと温かくしてね」
「ありがとうリアラ、大丈夫よ」
「じゃあ父様、いってきます」
「ああ、いってらっしゃい」
手を振り二人を見送るゼクス。扉が閉まると同時に、背後から声がかかった。
「優しい子に育ったわね」
「レイザード…」
優しく微笑む同胞に、ゼクスは声をかける。
「今日はあなたから魔力をもらったおかげで動けるし、見回り一緒に行かせてもらうわ」
そうしたら早く城にも行けるでしょう?と言うレイザードにゼクスは微笑む。
「ああ、ありがとう。なら、さっそく行くか」
「ええ」
二人も家を後にし、見回りに出た。