事務所に帰ってきたダンテは、そっとソファにリアラを下ろすと、タオルケットを取りに歩き出す。いくらその身に宿る魔狼の血で寒さに強いとはいえ、冷えきった彼女をそのままにしてはおけない。
ダンテが二階へと上がっていき、室内が静まり返った頃、リアラの両腕につけられているブレスレットが淡く光を放ち始めた。明滅を繰り返しながら青い光は窓際へ移動すると、人の形になった。
黙ったまま、人影は窓の向こうの月を見上げる。


「……」


その時、ギシリ、と木の軋む音が鳴った。人影は音のした方へ顔を向ける。


「……誰だ」


低い声で言い、エボニーを構えながらダンテは人影を睨みつける。人影は肩を竦めると、ゆっくりと口を開いた。


「…気配を感じればわかるでしょう?お願いだから、その銃を下ろしてくれないかしら」

「……」


しばらくの沈黙の後、ダンテは銃を下ろす。人影はダンテの右腕に抱えられていたタオルケットに視線を落とすと、柔らかく目を細めた。


「リアラのために持ってきてくれたのね。ありがとう」

「…お前は、ゼクスの知り合いか?あいつと気配が似てる」

「ちゃんと自己紹介はするわ。その前に…その子に、タオルケットをかけてやってくれないかしら」


そう言ってソファに横たわるリアラに視線を向ける人影に、ダンテもリアラに視線を向け、彼女の横たわるソファに近づく。
リアラにタオルケットをかけてやり、空いたスペースに座ると、寝やすいようにと自分の膝に彼女の頭を乗せてやる。彼女の頭を撫でてやりながらダンテが人影に視線を向けると、人影は微笑み、口を開いた。


「こうやって会うのは初めてかしら、スパーダの息子さん。私の名前はレイザード。魔狼ゼクスの同胞であり、リアラの魔具よ」


そう言う人影―レイザードを窓から射し込む月明かりが照らす。
紺色の髪に瑠璃色の目をした、20代後半の美しい女だった。腰までの長い髪は両頬の一房の先が緩く巻かれている。深い青をした服は胸元が大きく開いており、豊かな谷間が覗く。腰には茶色のコルセットを着け、深いスリットが入った黒いロングスカートからは白い足が顔を覗かせている。首にはリアラがつけているブレスレットと同じ物がつけられていた。
そう自己紹介した人影―レイザードに、ダンテは口を開く。


「…魔具になったってことはお前はもう死んでるのか?」

「ええ。友人であるスパーダに協力し、ゼクスと共に魔帝ムンドゥスに挑んだ時、道半ばで、ね」


死んだと言う表現はおかしいけれど、とレイザードは苦笑する。


「なら、何で姿を現せる?」

「満月の日だけ、主であるリアラから魔力をもらってるのよ。そのおかげでこうして姿を現せるってわけ。…魔力をもらう理由は、言わずともわかるでしょう?」

「…暴走を抑えるため、か」

「ご名答」


足を組み替え、レイザードは続ける。




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