「……リアラ…」
すっ、とダンテが一歩を踏み出す。パキ、と音を立てて氷を踏みしめ、ダンテは一歩一歩リアラに近づく。
「や…だめ…。お願い、近づかないで…」
震えて後ずさろうとするリアラの前で立ち止まると、ゆっくりと膝を折り、ダンテは彼女を優しく抱きしめる。
「…っ!」
「…大丈夫だ、傷つけたりしないから…。どんな姿をしてても、お前はお前だ」
だから、安心しろ。ダンテがそう告げると、リアラの呼吸が少しずつ落ち着いていく。瑠璃色とアイスブルーの明滅を繰り返していた瞳はいつもの瑠璃色を取り戻す。
宥めるようにダンテがリアラの背中を撫でていると、彼女はダンテの服を掴み、潤んだ目でこちらを見上げた。
「ダンテ、さん…」
あり、がとう。そう告げると共に、リアラの身体から力が抜け、崩れ落ちる。彼女の身体をしっかりと受け止め、ダンテは呟く。
「…早く気づいてやれなくて、ごめんな」
辛そうに顔を歪めると、ダンテはリアラに自分のコートを頭から羽織らせ、抱え直すと立ち上がる。
壊れた窓から射し込む月明かりが、室内を静かに照らしていた。