日も暮れ、街がすっかり闇に包まれた頃。
椅子に深く腰かけ、組んだ足を机に乗せ、いつものお決まりのポーズを取りながら、ダンテは考え込んでいた。
「………」
昼過ぎにリアラを見送ってからというもの、彼女の隠していることが気になって、何をしていても頭の隅を彼女の姿がよぎる。考え込んでも彼女の隠していることがわかるわけがないのに、考えずにはいられなかった。
はぁ、とダンテは深いため息をつく。
「考えても仕方ねえってのに…」
気分転換にシャワーを浴びようと立ち上がった時、ダンテは夜なのに外が明るいことに気がついた。窓に近づき外を眺めてみると、夜空に真円を描いた月が浮かんでいた。
「満月か…」
ポツリと呟いたダンテは、なぜか自分で呟いたその言葉に引っかかりを感じた。
(満月…?)
心の中で呟いたその時、ふいに、昔、ゼクスとフィーリアに世話になっていた頃、今のような満月の日にゼクスとした話を思い出した。
『おじさん、何で今日はおおかみのすがたをしてるの?』
『魔狼の私にとって、今日は魔力が高まる日なんだ。人の姿で高まった魔力をコントロールするのは少し難しくてな』
『おじさんほどの人でも?』
『ああ。悪魔は満月の力を受けて強くなるが、私は殊更影響を受けやすいんだ。他の悪魔より魔力が高まる分、コントロールは難しくなる』
『ええっと…』
『そのうち、お前にもわかるさ。自由に魔力を使えるようになったらな』
満月…魔狼…魔力の高まり…魔力のコントロールが難しい…。
「……っくそ!」
今になってリアラが隠しているものの正体がわかり、思わずダンテは舌打ちする。赤いコートを羽織り、机から双子の愛銃を取り上げてホルスターに収め、壁に立て掛けていたリベリオンを背に担ぐと、荒々しく玄関の扉を開ける。
(間に合えよ…!)
リアラの気配を探りながら、ダンテは地を蹴った。