一方、離れた依頼先に行っているはずのリアラは、まだスラム街の中にいた。
「はぁ…」
大きなため息をつき、リアラは窓際に腰かける。街の隅にあるこの工場は、以前、ダンテと一緒に依頼で来た場所だ。
ガラスの割れた窓から、リアラは外を見つめる。夕焼けで赤く染まった空は、あと二、三時間もしたら闇に染まり始めるだろう。
リアラは小さく呟く。
「…ごめんなさい、ダンテさん…」
一緒に暮らしているのだから、言わなければいけないことはわかっている。長く隠し通すことができないことも、わかっている。
だけど。
(知られるのが、怖い…)
知られてしまうのがとても怖い。このことを知った時、ダンテはどんな顔をするのか。
せめて、告げるための心の準備ができてから。
(それまでは、隠し通させてください…)
ダンテの姿を思い浮かべ、リアラは静かに目を閉じた。