「あの子の様子がおかしい?」
「ああ」
午後、ダンテはたまたま事務所にやってきたトリッシュと話をしていた。ちなみにリアラは夕食の買い出しに出かけていて今はいない。
何か考えているのか難しい顔をしているダンテを見たトリッシュは何となくでわけを尋ねた。ため息をついたダンテは理由を話すためにソファに移動してトリッシュと話をしている、というわけだ。
「最近、リアラの顔色が悪い。夜中にうなされて起きてるのと関係があるんだろうが…」
「うなされてる?夢見が悪いってこと?」
「ああ。よほどの悪夢なんだろうな、苦しそうに声を漏らしては、目ぇ覚ましてるみてえだ」
二、三日程前だろうか。微かに聞こえた呻き声に目を覚ました。耳をすませるとリアラの声で、彼女が夢でうなされていることを知った。
話を聞いていたトリッシュは静かに口を開く。
「…もしかして、母親の夢を見てうなされてるのかしら」
「…知ってたのか?」
「初めてあの子と会った時に聞いたから」
可能性はあるんじゃないかしら、と告げたトリッシュにダンテは頷く。
「ああ、その可能性は高いだろうな」
まだ若い頃、自分も母親が殺された時を夢で見てうなされたことは何度もある。テメンニグルで兄であるバージルと別れてからは、それさえも夢に見て、何度苦しんで起きたかわからない。
昔、リアラも母親を目の前で殺されたと聞いたことがあるから、今まで何度も夢で見てうなされたことがあるのだろう。
「ただ、何で最近になって夢でうなされてるのかがわからねえ。時々夢でうなされてたのなら、この前にもこういうことがあってもおかしくないはずだが…」
「そうね。何か他の理由がありそうね」
明日も同じことがあるようだったら聞いてみたら?と言うトリッシュに、ああ、とダンテは頷いた。