森の中を黒い影と白い影が駈ける。黒い影は時々白い影に刃を飛ばすが、白い影は素早い動きでそれを避ける。
『くっ…!』
悪魔が苦々しげに声を溢したその時、銃弾が悪魔の後ろ足を撃ち抜いた。走っていたため身体を支え切れず、悪魔はその場に倒れる。リアラが悪魔の目の前で立ち止まると悪魔に銃を突きつけ、ダンテは言う。
「そろそろ鬼ごっこはおしまいだ。観念してもらおうか」
何とか上半身だけ起こすと、悪魔はダンテとリアラを睨みつける。
『思い出したぞ…裏切り者のスパーダ、そしてゼクス…貴様等はその子供か!』
「だったら何だっていうんだ?俺らには関係ない」
『関係ない…?母親を殺されてもか?』
その言葉に、ダンテの表情が険しくなる。嘲笑うように悪魔は続ける。
『貴様等の父親がムンドゥス様を裏切らなければ、貴様等の母親は殺されることはなかったのだ。人間などとの間に子をもうけるなど…愚かにも程がある』
『黙れ』
突如、鋭い氷柱が悪魔の胸部を貫いた。驚き、ダンテがリアラを見下ろすと、彼女は冷たく凍てつくような殺気を放っていた。
『母様が殺されたのは父様のせいじゃない。母様も父様も優しくて強い人だ。愚かなのはお前の方だ』
ビキビキと音を立てて地面が凍りつき、悪魔の足元を凍らせていく。その時、ポン、とリアラの頭にダンテの手が乗せられた。
「落ち着け、リアラ」
『ダンテさん…』
「後は俺がやる。こいつを仕留めるのは俺に任せてくれたんだろ?」
『……』
こくりと頷き、リアラは攻撃の手を止める。再び悪魔に銃を向け、ダンテは呟く。
「お前に俺らの両親をとやかく言われる筋合いはないな。…ただ、人の親を罵った償いはしてもらうぜ」
低い声で告げると、ダンテは弱った悪魔に容赦なく銃弾を撃ち込んだ。