「女三人で何話してるんだ?」
背後から声が響き、同時にポン、と頭に大きな手が乗せられる。驚いてリアラが後ろを振り返ると、上半身裸で肩にタオルを掛けたダンテがいた。
「やっと出てきたのね」
「風呂から上がったらお前らの声が聞こえてきたんだよ。で、何か用か?」
「仕事を頼みにきたのよ。説明はするけれど…その前に何か羽織ったら?その子、顔真っ赤よ」
レディの言葉にダンテが目の前のリアラに視線を移すと、彼女は顔を真っ赤に染めて俯いていた。その様子に苦笑すると、ダンテは彼女の頭をくしゃりと撫でる。
「一旦、部屋に戻って何か羽織ってくる。ちょっと待っててくれ」
そう言い、ダンテは一旦その場から離れる。
数分後、いつもの黒いインナーを着てダンテが戻ってきた。
「待たせたな。で、仕事ってのは?」
リアラの隣に座りながらダンテが問うと、レディは話を始めた。
「ここから少し離れたある村で夜な夜な村人が何かに襲われているらしくてね、あんたにその原因を突き止めてほしいのよ」
「何か?正体はわからないのか?」
「はっきりとはね。ただ、地面に獣の足跡のような物が残っていたらしいわ」
「山から動物でも下りてきてんのか?害獣駆除なら他所に頼んでくれ」
「話は最後まで聞きなさい。その獣の足跡っていうのが普通の動物とは違ってたらしいの。猫に似たような形だけど、一緒に妙な爪跡がついていたらしいわ」
「…悪魔の可能性が高い、ということですか?」
「そういうこと。この子の方が理解が早くて助かるわ」
この子に任せようかしら、と呟くレディにダンテはため息をつく。
「おいおい、俺に持ってきた話だろ?」
「あんたがちゃんと話を聞かないからでしょう?まあ、あんたがやってくれた方がいいけどね、借金もあることだし」
『借金』、その言葉を聞いてリアラの表情が変わった。
「借金!?ダンテさん、まだ借金あるんですか!?」
リアラが隣にいるダンテをキッと睨むと、あー…、とダンテはばつが悪そうな顔をして視線を逸らす。
「三日前、私が事務所の机の引き出しからピザやらお酒やらの請求書見つけて怒ったばかりですよね?その後、私が支払いましたよね?」
「……」
「『ピザ代はいいからお酒代だけ返してください』って言って、お酒代返し終わるまでピザを頼むのは禁止になって、昨日、やっと返し終わったばかりですよね?まだ借金あったんですか?」
「……」
「…まさか、この他にもまだあるんですか?」
「…いや、ない」
「本当に?」
「本当だ」
リアラの言葉と雰囲気に押されじりじりと後ずさるダンテの姿に、レディとトリッシュは目を瞬かせる。
「リアラって大人しいかと思ったら、そうでもないのね」
「でも、おかげでおもしろい物が見れたわ。これから退屈しなくて済みそう」
「そうね。ダンテ、今回はその子に免じて仲介料を安くしてあげるわ。受けるわよね?」
にこにこしながら言うレディに大きなため息を吐き、ダンテは頷いた。