しばらくダンテがテレビを見ていると、キッチンから足音が近づいてきた。
「お待たせしました」
リアラはテーブルの前で足を止めると、トレーからガラスの器を取り、ダンテの目の前に置く。
透明なグラスを透かして見える層は底にコーンフレークが敷かれ、その上にバニラアイス、苺ジャム、生クリームと重ねられていてとてもきれいだ。てっぺんには苺ジャムのかかったバニラアイスが置かれ、その回りを生クリームと苺が飾っている。
「うまそうだな」
そう言うダンテの目は輝いていて、まるで小さな子供のようだ。その表情にくすりと笑みを溢し、リアラは口を開く。
「溶けないうちにどうぞ」
「じゃあ、さっそく」
ダンテはスプーンを手に取ると目の前のストロベリーサンデーに遠慮なく突き刺す。きれいに重なった層を一口分掬い取ると、ぱくりと口に含んだ。
「うん、うまい」
どうやら満足してもらえたらしく、次々と食べ進めるダンテの姿にリアラはほっと安堵の息をつく。
ふいに、ダンテが手を止めてリアラを見上げた。
「お前は食べないのか?」
「私はいいですよ。まだアイスも残ってますし、それに苺ジャムをかけて食べます」
笑って答え、キッチンへ向かおうとするリアラをダンテは腕を掴んで引き留めた。
「リアラ」
呼ばれてリアラが振り返ると、ダンテがサンデーを乗せたスプーンを自分に向かって差し出していた。
「お前も食べろよ、うまいぞ」
「あ、え…」
差し出されたスプーンにリアラは戸惑う。食べてみろと言われても、そのスプーンはダンテが使っていた物で。つまりは、何というか…。
一向に口を開かないリアラに、ダンテはほら、と催促する。
「早く食べないとアイスが溶けちまう」
「…はぁ」
観念したようにため息をつくと、リアラは口を開ける。口に入れられたサンデーを黙って食べていると、ダンテはニヤリと笑う。
「な、うまいだろ?」
「…ええ、まあ」
バニラアイスと生クリームの甘さに苺ジャムの酸味が合わさって確かにおいしい。おいしい、のだが。
段々と頬を赤く染めるリアラにダンテは首を傾げたが、何となく理由を察して口角を上げる。
「何だ、間接キス気にしてんのか?」
「っ!」
尋ねるとこれ以上ないくらいに真っ赤になってしまったリアラにクッと喉を鳴らして笑い、ダンテは彼女の頭を撫でる。
「かわいいな、リアラは」
「っ、からかわないでください!」
目尻を吊り上げて怒ると、リアラはトレーを持ってキッチンへと消えていく。その後ろ姿を見ながら、これから楽しくなりそうだ、と心の中で呟き、ダンテは満面の笑みを浮かべた。
***
2013.12.27