店から出た二人は他の店を眺めながら、大通りをゆっくりと歩く。ちなみに先程買った棚は店の人に頼んで事務所に送ってもらうことにした。夕方には着く予定だ。
「他に必要な物はあるか?」
「後は食材くらいですかね。夕食を作らないといけないので」
そう答えるリアラを見て、ふとダンテはあることに気がついた。
「リアラ、お前、今着ている以外の服は持ってきてないのか?」
自分もいつもの赤いコートを着ているが、隣にいる彼女も昨日と同じ服を着ていた。
えっと、とリアラは口を開く。
「持ってきているのは仕事着の予備と室内で着る服くらいですね。仕事以外ではほとんど外に出ることはありませんから」
仕事着、というのは今着ている服のことだろう。つまり、旅をしている中で仕事の合間に気分転換に出かけたりすることはなかった、ということだ。その真面目さに感心すると同時に、少しは休む時間を持ってもいいのではないか、とダンテは思った。
「けど、その格好じゃ買い物に行き辛いだろ?」
「まあ、そうですけど…」
少し戸惑いつつもリアラは頷く。実際、この格好で店に入ると店員や他の客からじろじろと見られることがよくある。今日だって入った店で店員や客に何度も視線を向けられていた。
リアラの様子にダンテは顎に手を当ててしばし思案した後、頷いてこう言った。
「よし、服買いに行くぞ」
「え?あ、あの、ダンテさん…!?」
予想だにしない言葉にリアラが驚いている間にダンテは彼女の手を掴み、目的の場所に向かって歩き出した。