▽ 夜闇に浮かぶ華 9
「いいんです、ダンテさん。私は気にしていません」
『リアラ…』
「もうあの魔獣に戦う気力はないでしょう。これ以上、戦う必要はないです」
『……』
リアラに宥められ、ダンテは攻撃体勢を解く。銃に弾を一つこめ、リアラは魔獣の目の前まで進むと足を止める。
「忠告を聞き入れてもらえなかった以上、悪いけどあなたにはケルベロスの牢獄に行ってもらうわ」
『そんな、待って…!』
「待つことはできない。幸い、あなたは人を殺していないからすぐ牢獄を出られるわ。…少しの間、牢で反省しているのね」
『嫌、嫌…っ!!』
結界で牢の中にいる魔獣を覆うと、狙いを定め、リアラは銃を撃つ。銃弾が結界に当たった途端、魔法陣が浮かび上がり、次の瞬間には結界ごと魔獣の姿は消えていた。
「ふう…」
一息つき、リアラは銃を左脚のホルスターに仕舞う。こちらの様子を見ていたダンテの元に戻ると、リアラは優しい笑みを浮かべた。
「お疲れ様です、ダンテさん。蜂達の周りに張った結界を解いたら、このまま依頼主の方に報告をしに行きましょうか」
『ああ。…リアラ』
「?はい」
蜂達の周りに張っていた結界を解くリアラに、ダンテは気まずそうに話しかける。
『その…変なところにつっかかっちまって悪かったな。あんなの聞き流してればよかったんだろうが…』
「いいんですよ、気にしないでください。…それに、むしろ嬉しかったですし」
『嬉しかった?』
首を傾げるダンテに向き合うように立ち、リアラは続ける。
「どんな理由だとしても、私を認めてくれているってことだと思ったから。…こんなの、自分勝手な解釈ですよね」
『…!』
リアラの言葉にダンテは目を見開く。
「ごめんなさい、変なことを言ってしまって。行きましょうか」
踵を返し、歩き始めたリアラにダンテは口を開く。
『…俺は、どんな魔女であろうと自分で選んで契約を決めた魔女は認めてる。だから、お前のことも認めてる。もっと自信を持て』
「!」
思わず足を止め、リアラはダンテの方を振り返る。リアラの隣りに並ぶと、ダンテはリアラを見上げる。
『ほら、行くぞ』
「…はい」
嬉しそうに目を細め、リアラは頷いた。
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