▽ 夜闇に浮かぶ華 8
「…そう、なら動き自体を止めてあげる」
そう告げたリアラが銃で狙いを定めたのは、魔獣の羽。リボルバーから連続で放たれた弾は正確に魔獣の羽に当たり、凍らせてその機能を停止させる。
『っ!!』
羽が使えなくなったことにより空中で体制を保てず、魔獣の身体が傾く。
「ダンテさん、捕獲お願いします」
『ああ』
『っ!?』
突如響いた声と共に視界が何かに覆われる。身体を打ちつけ、何とか起き上がった魔獣がいたのは、蔦が絡まり合ってできた牢だった。
『くっ、これくらいの蔦…!』
蔦を切ろうと右手を振り上げるが、手が蔦に触れた瞬間、金属でできた手が大きく欠けた。
『っ、あああっ!!?』
『お前程度の力で切れるわけがないだろ、俺の魔力でできてるんだからな』
声のした方へ顔を上げると、蔦の向こうに見えたのは先程の魔女とその隣りに立つ一体の魔獣。その強大な魔力と魔女が呼んでいた名前に、魔獣はある噂を思い出す。
『お前は、まさか…あの五兄弟の一人、ダンテか!?』
『気づくのが遅いな。まあ、俺の気配に気づいていない時点で大した実力もないとわかっていたが』
目の前の事実が受け入れられず、魔獣は叫ぶ。
『なぜだ、なぜお前程の奴がそんな魔女についている!常界になど出なくても魔界で充分生きていけるだろう!』
『俺がどこで何をしようが、誰につこうがお前に関係ないだろ?ただ…そんな、とは聞き捨てならねえな』
す、とダンテの目が細められる。
『こいつは俺が選んで契約した魔女だ、それにケチつけるとはいい度胸だな』
『ひっ…!』
向けられた殺気に魔獣は悲鳴を漏らす。身を低くし、ダンテが攻撃体勢を取ったその時、ダンテの視界を細い指が遮った。
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