▽ 夜闇に浮かぶ華 7
「…忠告はしたわよ」
リアラが杖を振り上げると彼女の足元から氷柱が伸び、彼女を空中へと持ち上げる。トッ、と軽やかに飛び上がり、宙へ身を踊らせるとリアラは杖に魔力を込める。スノークォーツでできた杖の先端が淡い水色の光を放つ。
「あなた達は悪くないわ。…しばらくお眠りなさい」
弧を描くようにくるりと回ると、リアラの周りに無数の氷の結晶が生み出され、月の光を受けてキラキラと輝く。空気が冷たくなり、下がった温度に蜂達の動きが鈍り、やがて倒れるようにボタボタと地に落ちていく。蜂達を踏んでしまわないように地面に結界を張ったリアラはその上に降り立つ。
『私の子が…!』
「あなたの子ではないでしょう。この子達はここに住む人達が生活するために飼っているの…その人達に返しなさい」
『ふん、そいつ等を止めたからといっていい気になるな、お前さえ喰らってしまえばそいつ等など必要なくなる』
「今度はそいつ等呼ばわり?結局、自分のことしか考えてないのね」
『うるさい!今すぐ説教じみたその口を塞いでやるわ!』
高く飛び上がり、魔獣はリアラに向かって剣のように鋭く尖った手を伸ばす。
「うるさいのはどっちかしら」
ガンッ
『!』
銃声が響き、手が弾かれる。軽い痺れと共に感じた重さに魔獣が自分の手を見ると、弾が当たった部分から凍り始めていた。パキパキと音を立て、あっという間に氷は魔獣の左手を覆ってしまった。
『っ…!』
「これで左手は使えないわね。まだやるつもり?」
『これで止められたと思うなよ、まだ右手がある!』
そう言い放ち、残った右手で再び襲いかかる魔獣にリアラは銃を向ける。
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