▽ 夜闇に浮かぶ華 5
「だいぶ暗くなってきましたね…」
『だな、そろそろ件の魔獣が出る頃合いか』
リアラとダンテは魔獣が現れたという蜂の巣箱が並べられた場所を近くの木の上から見下ろす。
「依頼主の方がパートナーについて理解してくれる方でよかった。おかげでダンテさんも家に入ることができましたし」
『そうだな、人間にしては理解が早かったし、依頼人の家族も理解してくれたしな』
リアラの言葉にダンテも頷く。
昼間の配達の仕事を終えたリアラは一旦家に戻って依頼の準備をし、すぐにダンテと共に依頼主の住む山へと向かった。依頼主の家に着いたのは夕方で、二人が家を訪ねるとすぐ依頼主が出迎えてくれた。ダンテに家の外で待ってもらい、中に入ったリアラは依頼主と依頼の話を始めた。当初、噂でパートナーなしで魔獣を捕獲する仕事をしていると聞いていた魔女がパートナーを連れて来たことに依頼主は戸惑っていたが、リアラが一言詫び、丁寧に説明したことにより、依頼主は理解してくれた。彼の妻も受け入れてくれ、ダンテは家の中に入ることができた。
「ダンテさん、子供達に懐かれてましたね。子供が好きなんですか?」
『ん?ああ、まあな。一人でいる時は行く先々で子供に会って遊びに付き合ってやることはよくあったし、弟がいるから小さい時は遊んでやることも多かったしな』
「そうなんですか」
どうりで子供の対応に慣れているわけだ。子供が好き、というのも嘘ではないのだろう、本人も楽しそうにしていたから。くすっと笑ったリアラにダンテは首を傾げる。
『どうした?』
「ダンテさんの新しい一面を知ったな、と思って。ダンテさんは優しいんですね」
『そうか?』
「子供が好きな人は優しい人だと思いますよ」
そう言って向けられた優しい笑顔に、ダンテも笑みを浮かべる。
『…そうか』
だが、次の瞬間には笑みは消え、気配のした方へと視線を移す。リアラも気配に気づいたのだろう、その声は先程より低い。
「…来たみたいですね」
『ああ。どうする?』
「少し様子を見ましょう。行動がわからないと対策を立てられませんし」
『わかった。俺はお前の指示で動く、作戦は任せたぞ』
「わかりました」
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