▽ 夜闇に浮かぶ華 3
十分程経った頃、用事を終えたリアラが戻ってきた。
「すみません、お待たせしました」
「ああ。魔獣退治の依頼か?」
ダンテの言葉にリアラは目を瞬かせる。
「…わかるんですか?」
「さっきのお前の雰囲気で何となくな。で、内容は?」
「…山で養蜂を営んでいる方からの依頼なんですが、一週間程前から、蜂達の様子がおかしいそうです。昼は普段と変わらないのですが、夜になると集団で巣箱からいなくなってしまうそうです。一度、気になって夜に様子を見に行った時に魔獣らしき姿を見かけたそうで、今のところ仕事に支障は出ていないそうですが、家族が危険に晒されるかもしれないので退治してほしいとのことです」
「なるほどな。魔獣の中には常界の動物を操る奴もいる、間違いないだろうな。それなら階位は高くなさそうだ」
「そんなことまでわかるんですか?」
「ああ。火や水を操るのと違って常界の動物を操る魔術ってのはそれだけ他人の力に頼ってると見なされて階位が低い。魔界は魔力の強さと実力で階位が決まる世界だからな、本当に強い奴は他人なんかに頼らない」
「そうなんですか…」
魔界がそういう世界だとは知っていたが、使う魔術によっても階位に影響があるなんて知らなかった。興味深そうに頷いたリアラに、で、とダンテは続ける。
「いつ行くんだ?」
「日中は配達の仕事で予定が埋まっているので、夜に行きます。急ではありますが、早く解決するに越したことはないでしょう。それに、夜の方が魔獣が現れやすいですし」
「確かにな。じゃあ、俺もついて行くか」
「…え?」
驚きに目を見開いたリアラにダンテは苦笑する。
「何驚いてんだ、お前が行くって言うならパートナーの俺もついて行くのは当たり前だろ。お前と同じ仕事をしてるやつらもパートナーの魔獣を連れていただろ?」
「そう、ですね…。すみません、ずっと一人で仕事をしていたから、今回も一人で行くつもりで考えていて…」
「責めてるわけじゃねえよ、謝らなくていい」
そう言い、ダンテはリアラの頭にポン、と手を置く。
「で、俺はついて行っていいのか?」
「あ、えっと…はい、お願い、します…」
「わかった」
髪型を崩さないように撫で、手を離したダンテを見上げ、あの、とリアラは口を開く。
「一つ、お願いがあるんですが…」
「ん?何だ?」
「とても申し訳ないお願いだとは思うんですが…」
一度言い辛そうに俯き、リアラは続ける。
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