▽ また一つ、君を知る 14
『ん…』
外から聞こえた音にダンテは目を開ける。耳に届いていたのはザアザアと雨の降る音だったようで、また雨が降り出したのだとわかった。身体を起こそうとしたダンテは傍にいた存在に気づき、そちらを見やる。
「……」
傍にいたのはリアラだった。眠っているのかすやすやと穏やかな寝息を立てている彼女は、どこにも寄りかからずに座っているためか身体が前に傾いていて、そのままだと倒れてしまいそうだった。
(晩飯の片付けが終わった後に来たんだろうな)
彼女が夕食の片付けをしている時に寝てしまったから、おそらくは片付けを終えて自分の様子を見に来た時に傍にきてそのまま寝てしまったのだろう。ダンテは尻尾を伸ばすとリアラの脇の下に通して彼女の身体を軽く引き寄せる。引き寄せられるままにリアラはダンテの身体に寄りかかる形になる。
「んん…」
リアラは身動ぎ、寝返りを打つように横になると、縮こまるように身体を丸める。尻尾で優しく彼女の頬を撫でながら、ダンテはリアラを見つめる。
(今までの俺なら、こんなにパートナーを気にかけることはなかったな…)
契約した以上やるべきことはやっていたが、そこまで深入りすることはなく、どこか一線を引いていた。けれど、彼女に対しては何かと気にかけてしまい、自分から声をかけてしまう。一線なんてもう踏み越えてしまっていて、普段の自分なら何をやっているんだ、と呆れているのに。
(何かしてやりたいって、思っちまうんだよな…)
自分と同じ境遇だから?契約という関係でも、対等に見て接してくれるから?思うことはたくさんあるが、きっと全て含めてなのだと思う。
(必要とされる限りは、傍にいてやるさ)
自分がパートナーでいる限り、彼女は他の魔獣と契約しないと言ってくれたのだから、自分もそれに応えよう。
『…おやすみ、リアラ』
かけられた言葉に反応するように微かに笑みを浮かべたリアラに自分も笑みを浮かべ、ダンテは眠りについた。
***
2017.9.15
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