▽ また一つ、君を知る 13
「ありがとな、じゃあ行くか」
「うん」
頷き、二人はリビングに戻るために階段を上る。階段は一人分の広さしかないため、リアラが先に、ダンテが後に上る形で歩みを進めながら、ダンテが口を開く。
「しっかし、そんなに忙しいなら俺と手分けして配達すればいいだろうに…そこんところは譲らないもんな、お前」
「直接お客さんに会って渡す、が私の仕事の信条だからね。そこは譲れないよ」
一旦足を止めたリアラは、ダンテの方を振り返って続ける。
「でも、ダンテが配達についてきてくれるようになってから、仕事が早く終わるようになったんだよ。ダンテに乗って行くと、杖で飛んで行くより早いし…配達の時間に指定がある場合はなかなかそうはいかないけど、時間に指定がなければそっちを先にして行けるし。すごく助かってる」
それじゃだめ?そう言って笑う彼女の言葉は真っ直ぐで、純粋な感謝の気持ちを向けられて珍しく照れくさくなってしまう。
「…そうか、ならいい」
思わず目を逸らしてしまったが、照れているのがわかったのか、彼女はふふっと笑う。時々だが、彼女にペースを乱されている気がしないでもない。でも、それもいいと思っている自分がいる。
(…本当、不思議なやつだな、リアラは)
契約した当初はいつか飽きて契約を切るだろうと思っていたのに、今ではそんな気持ちも薄れている。むしろ、再会した時から守ってやらないと、と思っていた気持ちが一層強くなっていると感じる。じっとリアラを見つめていると、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「?どうしたの?」
「いや、何でもない。早く行こうぜ」
「うん。お風呂から上がって喉渇いてるだろうから、リビングに戻ったらアイスティー用意するね」
「ああ、ありがとな」
ニコッと笑うリアラが向けてくれる気持ちは優しく、温かい。再び階段を上がり始めた彼女の後に続きながら、もうしばらくはこんな生活をするのもいいか、とダンテは緩く笑みを浮かべた。
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