▽ また一つ、君を知る 12
「ダンテ」
「やっぱりここにいたか」
ひらひらと手を振りながら階段を下りてきたのはダンテで、風呂から上がったばかりなためか、髪は濡れて肩にかけたタオルにポタポタと雫を落としている。呆れたようにため息をつき、リアラは言う。
「ダンテ、髪はちゃんと拭かなきゃだめっていつも言ってるじゃない」
「おお、悪いな」
「悪いって思ってないでしょ。はぁ…こっちに来て、そこだと足場が狭いから」
手招きしてダンテを呼び、リアラは一旦小屋から出る。自分の前まで来たダンテに屈むように言い、屈んだ彼の肩からタオルを取ると彼の頭に手を伸ばす。
「痛かったら言ってね」
「ああ」
小さな魔獣の姿をしていた時と同じように、あまり力をかけないように丁寧に髪を拭いていく。
「はい、終わったよ」
「ああ、ありがとな」
「どういたしまして」
髪から雫が落ちなくなったことを確認して、ダンテの頭から手を離し、リアラはタオルを畳む。ダンテは薬草庫の中を覗き込み、ほう、と興味深そうに声を上げる。
「薬草庫の中ってこんな風になってるんだな」
「ああ、そういえばダンテはこっちまで来たことなかったね。普段は人を入れることはないんだけど…」
うーん、と考え込み、リアラは呟く。
「…入ってみる?」
「いいのか?」
「うん、ダンテなら薬草を悪いことに使わないだろうし。それに木の属性なら、常界の植物にも興味はあるでしょう?」
どうぞ、と勧められ、ダンテは薬草庫の中に入る。薬草の独特な匂いがする中は棚がずらっと並んでいるが整理整頓されていて、物の場所がすぐにわかる。彼女の性格が表れているなと思った。
「火薬に染め物…薬に使う物だけじゃないんだな」
「うん、植物ってね、いろんな使い道があるから。使い方も人によって様々なんだよ」
「だから配達する数も多いってことか。そりゃあ毎日忙しいわけだ」
納得した顔で頷くと、ダンテは薬草庫を出る。
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