▽ また一つ、君を知る 8
「…うん、これくらいでいいかな。暗くなる前に帰ろうか、ダンテ」
『ああ』
リアラは採った薬草の束を鞄に仕舞う。空を見上げると、雲が青空を覆い始めていた。
「雲が多くなってきたな…そろそろ雨が降るかも」
『そうだな、早く帰るか。さっき下りてきたところまで戻るのか?』
「うん、ここだと木に囲まれて飛び辛いから」
頷き、先程下りてきた場所まで戻ろうとリアラが踵を返した時だった。
ポツ、
「あ…」
腕に一雫の雨粒が落ちる。ニつ、三つと雨粒は増えていって、ついにザアザアと大きな音を立てて雨が降り始めた。
『リアラ、こっちだ!』
「う、うん!」
雨宿りをしようと辺りを見回していたリアラにダンテが声をかける。彼について近くにあった大きな木に駆け込み、リアラは一息つく。
「ありがとう、ダンテ」
『気にするな。…それにしても、どうしたもんかね。雨、どんどん強くなってるぞ』
「傘代わりに結界を張りながら帰ることもできるけど、視界が悪くなるし…しばらく様子を見て止まないようなら、雨足が弱くなったのを見計らって帰るしかないね。…ごめんね、最初の薬草を採り終えた時に帰っていれば、雨が降る前に家に着いたかもしれないのに…」
『リアラのせいじゃないさ、俺がいいって言ったんだからな』
「…ありがとう。とりあえず身体拭こうか、雨に濡れちゃったし、このままじゃ風邪を引いちゃう」
リアラは鞄からタオルを取り出すとダンテにおいでと手招きするが、ダンテは首を振る。
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