▽ また一つ、君を知る 7
「これだよ」
おいでと手招きされて、ダンテはリアラの隣りに移動する。彼女の指差す先を見ると薄い緑色をした草が生えていて、葉先に溜まった雫が僅かな日の光を反射して輝いている。
『色、薄いんだな』
「あまり日の光が当たらないからね。今から薬草を採るから少し待っててもらえるかな?」
『ああ』
ダンテが頷くとリアラは目の前の薬草に手を伸ばし、根元より少し上辺りで摘み取る。立ち上がって周りを見渡し、同じ物を見つけると移動してしゃがみ、摘み取る。その動作を繰り返し、五分程で彼女の左手には一束できる程の薬草が集まった。リアラは鞄の脇に付いたポケットから麻紐の束を取り出し、薬草の束に巻いて緩まないように軽く指で押さえる。次いでポケットから小さな鋏を取り出すと適当な長さで紐を切り、残りの紐と鋏を仕舞うと、手早く薬草の束を纏めている紐を結んだ。淀みのない流れるような動作にダンテは感嘆の声を上げる。
『ほう…手慣れたもんだな、仕事にしてるだけある』
「ふふ、ありがとう。…よし、じゃあ行こうか」
『もういいのか?』
「うん、貴重な薬草っていうのもあるけど、どんな薬草でも採りすぎちゃいけないからね。次に来た時に採れるように、ある程度は残しておかないと。今日採った薬草も根があればまた生えてくるし。根がついたままで売れば高値になるからって根こそぎ採っちゃう人もいるけど、そんなことしてたらどんどん数が少なくなって最後にはなくなっちゃって、最終的に困るのは自分だからね。それに、自然の循環の中で生きているんだから、それを乱すようなことはしちゃいけないよ」
『いろいろと考えてるんだな、お前』
「考えてるというよりは教えてもらった、の方が正しいかな。一人前の魔女になるまでに母様にはいろんなことを教えてもらったから。それに、二百年生きてきて覚えたこともあるし」
『そうか』
「うん。まだ明るいし、もう一種類採りに行こうか。近くに頭痛薬の材料になる薬草が生えてるの、ここから歩いて十分くらいかな」
『すぐ近くだな、なら行くか』
「うん」
笑顔で頷き、リアラは隣りに並ぶダンテと一緒に次の目的地に向かって歩き始めた。
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