▽ また一つ、君を知る 5
森の開けた場所に足をつけ、リアラは杖を手に持つ。
「着いたよ」
『ああ』
「薬草の生えてる場所まで少し歩くけれど、どうする?このまま肩に乗ってる?」
『いや、それはさすがに悪いからここからは飛んでついていく』
「そっか、わかった」
リアラが頷くと、ダンテは翼を広げ、宙に浮いてリアラの隣りに並ぶ。リアラは鞄の持ち手に付けていた二本の革のベルトに杖を固定し、木々の生い茂る中へと歩き出す。
『杖、持ったまま歩かないんだな』
「うん、薬草を採る時は両手が使えるようにするために持たないようにしてるの。杖を持ったままだと歩き辛いし」
『そうか。けど、それだと魔獣に襲われた時にすぐに反撃するのは難しそうだな』
「あはは、そうだね。手から直接魔法を放つことで凌ぐこともできるけど、杖を使ってる時より威力は劣るから厳しいね」
できれば魔獣には襲われたくないなあ、そう言って苦笑するリアラ。こうやって冗談のように言えるようになるまで、何年の月日がかかったのだろう。こういう彼女の姿を見る度に、守ってやらないと、と思う自分がいる。重い空気になってしまわないように、けれど真剣にダンテは言う。
『…今は俺がいるからな。もし魔獣に襲われたとしても、俺が守ってやる』
「…ありがとう」
少し目を見開いた後、目を細めて静かにリアラは微笑む。
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