▽ 結ぶのは、一人だけ 17
「…傍にいて安心できるから、じゃだめ?」
「!」
バッと顔を上げたダンテが見たのは、困ったように眉を下げて微笑むリアラの姿。
「百年くらい一人で過ごしてきたけれど、魔女や人の偏見の目に晒されたり、魔獣に襲われたりして、心が休まる時間なんてほとんどなかった。一人でがんばろう、って、父様や母様に、他の人に迷惑をかけないようにしよう、ってずっと思ってきて…」
「……」
「…けど、ダンテが私のパートナーになってくれてから、少しずつ、ほっとできる時間が増えていって、気を緩められるようになって…これは、全部ダンテがくれたものなんだよ」
「…リアラ…」
「だからね、こんな俺と、なんて言わないで。ダンテはこんな私と契約を結んでくれた、とても優しい人よ」
「…っ」
息を飲んだかと思うと、突然、ダンテはリアラを抱きしめた。驚いて目を見開くリアラに、ダンテは静かに返す。
「…なら、お前もこんな私と、なんて言うな。お前はお前が思ってる以上に優しいやつだ」
「…!…っ、ありがとう」
泣きそうなのを堪えて、リアラは笑う。自分も手を伸ばしてダンテの背中に置くと、彼の腕の力が強まる。
「…しばらくこうしてて、いいか?」
「うん、いいよ」
「明日からは俺も仕事についていくからな」
「依頼主の家には入っちゃだめよ?」
「…気をつける」
その言葉にふふっと笑いながら、リアラはダンテから与えられる温かさに心から安堵していた。
***
2017.08.20
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