▽ 結ぶのは、一人だけ 12
「…ようやく追いついたか」
ため息混じりの言葉の後に聞こえた、バサッ、と翼の羽ばたく音。ふわりと浮いた身体にリアラが目を開けると、そこにいたのは。
「ダンテ…」
「間に合ってよかったぜ」
夜闇でもわかる白銀の髪、アイスブルーの目。自分のパートナーの姿が、そこにはあった。笑ってはいるが心底安堵したという顔をしていたダンテは、リアラの首にある赤い痣に笑みを消す。
「…リアラ、それどうした?」
「え?…あ…」
ダンテの視線の先に気づき、リアラはどう説明したものか戸惑う。つい彼女が上げた両手にも赤い痣がついていて、ダンテは眉間に皺を寄せる。
「ダンテ」
下から声をかけられ、ダンテは視線を下ろす。此奴だ此奴、と死神が目の前にいる男を指差していて、ダンテは全てを悟った。
「…なるほどな。あいつにはキツイ仕返しをしてやらないといけないみたいだな」
言葉を紡ぐ声はいつもより低く、見下ろす目は怒りと殺気を帯びている。思わずリアラがダンテの服を掴むと、それに気づいたダンテが笑いかける。
「大丈夫だ、殺したりはしない。お前がそういうの嫌いだからな」
「ダンテ…」
「…後始末をしてくる。今日で悩むのは終わりだ。だから、これ以上魔力を使うな。結界は必要ない。結界を、消してくれるな?」
「…うん」
こくりと頷き、リアラは目を閉じる。少しずつ減っていた魔力が留まったのを確認して、よし、とダンテは頷く。
「一旦下りるぞ、俺の首に腕を回して、ちゃんと捕まってろ」
「…うん」
言われた通りに首に腕を回したリアラをしっかりと抱き寄せ、ダンテは彼女の身体に負担がかからないようにゆっくりと高度を下げる。地面に降り立つと、死神が男の服の襟を掴んだまま、こちらを振り向いた。
prev /
next