▽ 結ぶのは、一人だけ 11
「待たせたな」
ふわりと地面に降り立ち、死神はリアラに近づく。
「死神さん、怪我は…」
「私がすると思うか?」
心配するリアラに笑って返し、死神は彼女の目の前で屈むと、首に付けられた金属の首輪に手を伸ばす。死神の指先が首輪に触れると、首輪は音を立てて崩れていった。同様に腕の鎖も壊すと、死神はリアラに手を差し出す。
「立てるか?」
「はい」
身体に力を込め、リアラは立ち上がる。若干ふらつきながらも立ち上がったリアラを確認して、死神は立ち上がろうとしていた男に視線を移す。
「さて…」
男の目の前まで歩くと足を止め、死神は男を見下ろす。
「お前には躾が必要だな」
「ガ…ッ!」
死神が人差し指を上げるように動かすと地面から土の柱が男の顎を目がけて伸び、男の身体を持ち上げる。強制的に立ち上がる形になった男の首や両腕、両足にジャラ、と音を立てて鎖が絡まる。
「相手が嫌なことはするなと教わらなかったか?」
「グッ…!」
再び、死神の蹴りが男の腹部に入る。激しく咳き込んだ男はギリッと歯軋りし、顔を上げる。
「何だ、まだやる気か?」
「ああ、けどな…やるのはお前じゃない」
そう言うと同時に、男は腕を振り上げる。ゴウッ、と背後で音が響き、死神が後ろを振り返ると、リアラが風に飛ばされ、空中に舞い上がっていた。
「リアラ!」
「…っ!」
「そのまま落ちて針に刺さって死ねばいい!」
リアラの身体に強い風が落とすように吹き付ける。下には荒れた荒野に立つ、風で削られてできた鋭い石の針。『死』という言葉がリアラの脳裏をよぎり、リアラはゆっくりと目を閉じた。
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