▽ 結ぶのは、一人だけ 10
「…なっていないな。女には優しくしろと教わらなかったか?」
「!?」
突如響いた声に男は後ろを振り返る。リアラは男の向こうに見えた姿に目を見開く。
「死神さん!」
「ああ、リアラ。無事…ではなさそうだな。彼奴が怒りそうだ」
いや、確実に怒るな、と一人呟く死神に男は訝しげな表情を向ける。
「死神…?お前、あの『死神(ラ・モール)』か?」
「そうだが?」
「なるほどな…フン、まあいい。俺の結界を破ってきたようだが、同じ『ゴールド』なんだ、実力はそう変わらないだろ」
「ほう?言うじゃないか、やってみるか?」
「お望みならな!」
そう言うと同時に、男は死神に走りかかる。男の爪を飛んで避け、死神はクルリと空中で華麗に回って着地してみせる。
「これはどうだ!」
男が腕を振り上げると、地面から無数の針が現れて死神に向かう。死神は静かに右手を翳すと、スッと横へ滑らせる。その途端、彼女の眼前まで迫っていた土の針はボロボロと崩れ落ちていく。
「チッ、俺と同じ属性か!」
「どうした、もう終わりか?」
「抜かせ!」
背中から見えない翼を出した男は飛び上がり、空中で腕を振り上げる。ヒュン、ヒュン、と高い音が何度も響き、死神の服を切り裂く。
「おやおや」
「どうだ!目に見えない刃、お前はどうやって避ける?」
ニヤリと笑って、男は再び見えない刃を作り出す。男が手を振り上げようとした、次の瞬間。
「…なら、作り手を封じるだけだな」
「!?」
ポツリと呟いた死神は足に力を込めると高く跳躍し、男の目の前に迫る。急に目の前に現れた死神に男は目を見開く。
「私の服を傷付けた代償は重いぞ」
ニヤリと笑みを浮かべて告げると、死神は男の腹部に勢いよく膝を食い込ませる。
「グッ…!」
身を屈める男に、次いで胸に蹴りを入れる。相当の力が込められていたのか、男の身体は大きな音を立てて地面に叩きつけられた。
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