▽ 結ぶのは、一人だけ 6
「ダンテが心配してるだろうし、そろそろ帰るね」
「大丈夫?ここで少し休んでからでもいいんだよ?」
「ありがとう、でも、なるべく早く帰るってダンテと約束してるから。大丈夫、家に帰ったらやらなきゃいけないことだけやって早めに休むから」
「そっか、じゃあ玄関まで見送るよ」
「ありがとう」
二人で応接間を後にし、玄関へ向かう。廊下を歩いている中、ルティアがリアラに声をかける。
「ねぇリアラ」
「ん?」
「リアラはダンテのこと、どう思ってるの?」
「え?」
唐突な質問に、リアラは思わず足を止める。
「突然どうしたの?」
「ふと思っちゃって。私はまだ日が浅いけど、その…バージルと付き合ってるわけじゃない?私はバージルと打ち解けるのに時間がかかったけど、リアラはダンテと打ち解けるの早かったでしょ。人が苦手なリアラがあんなに打ち解けるの早かったなんて、何か思うことがあるのかな、って」
言われてみて確かに…とリアラは思う。過去、魔女や人間に偏見の目で見られ、魔獣には希少な存在として狙われ、それが嫌になって森の奥に住むようになり、仕事以外ではあまり人と関わらないようにしてきたのに。
「…何で、だろうね。優しいのはみんな同じだし、向こうから歩み寄ってくれたのはルティアと同じなのにね」
今まで、考えたこともなかった。ダンテをどう思ってるか、なんて。契約してもうすぐ三ヶ月、彼がいる生活にもすっかり慣れて、それが当たり前になっていたから。
「…あ」
「どうしたの?」
「いつの間にか、ダンテがいることが当たり前になってることに今気づいて…。余程意識してなかったんだね、私」
ああ、そっか、と頷き、リアラはルティアを見る。
「ルティア、たぶんで申し訳ないんだけど…私は、ダンテを家族のように思っているんだと思う」
「家族?」
「うん。希少な存在とか、そういうのじゃなく、一人の人として私の存在を認めてくれて、私を受け入れてくれて、傍にいて安心できる…私にとって、ダンテはそんな人。まるで、家族といるみたいで…だからきっと、ダンテは家族みたいな存在なんだと思う」
そう言って笑うリアラの笑顔は穏やかで、心の底からそう思っていることが伝わってくる。つられて、ルティアも笑みを浮かべる。
「そっか…」
「ごめんね、こんな曖昧な答えで…」
「ううん、リアラの気持ち、よく伝わったよ。答えてくれてありがとう、リアラ」
「恥ずかしいから、ダンテには内緒ね」
「うん、わかった。私とリアラ、二人だけの秘密だね」
「うん」
くすくすと笑い合って、二人は仲良く歩き出した。
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