▽ 結ぶのは、一人だけ 4
いつもより早めに仕事の話を終え、紅茶で一服する時間を挟んでから、ルティアは話を切り出した。
「それで…どうしたの?しばらく会わない間に何があったの?」
「えっとね…十日前のことなんだけど…」
そう前置きして、リアラは現在の状況を話し始めた。十日前に一人の魔獣に会い、自分のパートナーになってほしいと言われたこと、そしてそれを断ったこと。それからずっと、自分の行く先々に現れたり、家に来たりして困っていること。
「仕事の時には現れなくなったんだけど、代わりに毎日家に来るようになって…顔を合わせたくなくて、家のある森全体に結界を張ったんだけど…」
「森全体に!?まさか、それをずっと維持してるの!?」
「うん」
「いつから?」
「えっと…一週間前から、かな」
記憶を辿って答えるリアラに、ルティアは唖然とする。結界は張っているその間、ずっと魔力を取られ続ける。それを一週間もの間、しかも森全体に張っているとなれば、使う魔力は膨大だ。魔力のコントロール力に優れているリアラだからできることだろうが、自分がやったら一日と持たないだろう。
「そんなことしてたら疲れるのも当たり前だよ!せめてその魔獣が来なくなるまでの間だけでも仕事をお休みして…」
「それはできないよ。もう仕事が入っちゃってるし、それに私個人の理由で仕事を休んだら、薬草を必要としている魔女や人が困っちゃう」
それだけは譲れないの、そう言うリアラの目は真っ直ぐで、退く気はないようだ。はぁ…とルティアはため息をつく。
「わかった、じゃあその一件が落ち着くまで、リアラの負担にならないように私はなるべく仕事を頼まないようにするから」
「迷惑かけちゃってごめんね、ありがとう」
「これくらい、迷惑の内に入らないから。リアラはもう少し自分の身体を気遣わなきゃだめだよ。ダンテに心配されなかった?」
「えっと…」
困ったように目を伏せ、少しの間を空けてうん、とリアラは頷く。
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