▽ 結ぶのは、一人だけ 1
「そこのお嬢さん、俺のパートナーにならない?」
「……はい?」
少し風の強い夕暮れ、町での買い物を終え、家に帰ろうと森の入り口まで来たリアラにかけられた、突然の一言。
「…いきなり何でしょうか?」
「今言った通りだよ、俺のパートナーにならない?」
「…お断りします」
そう返して歩き出したリアラを追いかけるように男も歩き出す。
「えーなんでさ、俺強いよ?頼りになるよ?」
「確かにその気配の強さからしてお強いようですが、私にはもうパートナーがいますので」
「あーあのダンテって奴?いいじゃん、一人より二人いた方が安全だよ。君、魔獣に狙われやすいんだろ?」
男の言葉にピタリとリアラの足が止まる。
「…私の噂でもお聞きになりましたか?」
「君のことを知らない奴なんていないだろ?何せ、魔獣と魔女の子だ、そんな珍しい存在ならすぐ噂は広まる」
「私の力が目当てだと、そういうことですか」
「確かに君の力も魅力的だけど、俺は君の容姿に惹かれたんだ。君程きれいな魔女はそうそういないよ」
そう言って手を伸ばしてくる男の手を払い、リアラはその身に秘めた力のように鋭く冷たい目で男を睨む。
「口説きに来たのならお断りよ。今すぐ帰りなさい、でないと…容赦しないわよ」
自分に向かって杖を突きつけるリアラにおお怖い、と男は大げさに両手を挙げる。
「わかったよ、今日はここまでにしておく。けれど、俺は諦めないよ」
「…勝手にしたら?」
ふいっと顔を背け、リアラは森の奥に消えていく。リアラの後ろ姿を見つめ、男は呟く。
「…絶対、俺の物にしてみせるさ」
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