DMC×魔女パロ | ナノ


▽ 月の満ちる夜に 3

「………」


意識がゆっくりと浮上する。目を開ければ、見慣れた天井が視界に映った。


「夢……」


ぽつりと呟いて、先程まで見ていた内容を思い出す。
二百年近く前の、自分が小さな子供だった時に起こった出来事。家で両親の帰りを待っていたら、客に扮した魔獣に襲われて。逃げたはいいが、あまりの恐怖に魔力を暴走させ、動けなくなって喰われそうになって。その時、一人の男性が助けてくれて。魔獣を退けた後、自分を心配して、ずっと傍にいてくれた。


(あの後、気づいた父様が探しにきてくれたけど…あの人はいなかったのよね)


目を覚ました時には彼はいなくて、代わりにいたのは酷く心配そうな顔をした父だった。何とか状況を説明して、父と一緒に家に帰って。家で帰りを待っていた母が自分を見るなり泣きながら抱きしめてきたことを今でも覚えている。


(あの人に助けてもらわなかったら、私は今、ここに生きていなかっただろうな)


魔女になることもなく、二百年という長い年月を生きることもなく。十年足らずの人生をあそこで終わらせていたことだろう。


(でも、何で今更…?)


小さい頃に夢に見ることは何度かあったが、大人になる頃には全く見なくなっていたのに。


(予知夢…?…まさかね)


予知夢なんて魔女でも限られた者しか見ることができないし、自分には予知夢を見ることもなければ、そんな能力もない。


(それに、あの人にはあれ以来、一度も会っていない。…きっと、一生会うことはない)


魔女は長生きだから一度くらいは会えるかもしれないが、二百年近く再会することがなかったのだ、会える気がしない。…会えたなら、お礼を言いたいと思ってはいるが。


(やめやめ、朝から暗くなっちゃう!)


頭を振って気持ちを切り替え、ベッドから起き上がる。窓まで歩いてカーテンを開ければ朝の陽射しが入ってきて、外はいい天気だと教えてくれた。


「今日の配達の仕事は…」


今日やる仕事の内容を頭の中で確認しながら、顔を洗うためにバスルームに向かった。

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