▽ そう呼んで 7
「…本当に好かれてるんだな、お前」
「え?」
感慨深げに呟かれた言葉に、リアラは隣りを見る。広場を見るダンテの目には慈しむような色が滲んでいた。
「今までにいろんな魔女と契約してきたが…年齢関係なく幅広く、ここまで大勢の人に好かれてるのはお前くらいだよ」
「そんなことないですよ、キリエの方が私以上に街の方々に親しまれています。私以上の方はたくさん…」
「言ったろ、お前くらいだ、って。確かにあの嬢ちゃんも街のやつらに好かれてるけどな」
俺はお前の倍生きてるんだぜ?とダンテは悪戯っぽく笑う。確かに、自分より長く生きている彼の方が言葉に説得力がある。う、とリアラは言葉に詰まる。
「町のやつらがお前に好意的ってのもあるんだろうが、お前が町のやつらと向き合って、真摯に付き合ってきた証だろ?だからこうやって好かれてるし、親しまれてる」
そういうのはなかなかできないことなんだぞ。
何気ない会話をするように、けれど、告げられたのは心からの言葉。
「…そんなこと、思ったこともありませんでした」
「だろうな。お前にとっては、『困った人を助けるのは当然のこと』と同じくらいに当たり前のことだろうからな」
そう言って、ダンテは残りのアイスキャンディーを口に入れる。美味い、と顔を綻ばせるその横顔を見つめていたリアラは、自分を呼ぶ声に気づく。
「おねえちゃーん!」
「リアラおねえちゃん!」
先程、お礼に渡したアイスキャンディーを食べに向こうへ行っていた二人だ。こちらに走ってくる二人に、リアラは立ち上がる。
「どうしたの?」
「まえにおねえちゃんにおしえてもらったはなかんむり、つくったからもってきたの!」
「おはなはぼくがあつめたんだよ!」
「おねえちゃんにあげる!」
そう言って女の子が両手で差し出したのは白詰草の花冠だった。花冠と女の子を交互に見つめ、リアラは尋ねる。
「私に、くれるの?」
「うん!」
笑顔で頷く女の子。男の子も笑顔でこちらを見ていて。二人につられ、リアラの口元に笑みが浮かぶ。
「…ありがとう」
「おねえちゃんのあたまにのせてあげる!しゃがんで!」
リアラが言われた通りにしゃがむと、女の子は背伸びをしてリアラの頭に花冠をのせる。おねえちゃんきれーい!とはしゃぐ二人に、リアラは優しい笑顔でお礼を言う。その様子を、ダンテも優しい笑顔で見守っていた。
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