▽ そう呼んで 6
「終わりました。これで一時間くらいは持つと思います」
「すまないね、森の魔女さんは何も関係なかったのに。助かったよ」
「いえ、困っている方を助けるのは当然のことですから。電気屋さん、早く来るといいですね」
「ありがとうね。そうだ、よかったらこれ持っていっておくれ。あのお兄さんと一緒に来てるんだろ、一緒に食べるといいよ」
「すみません、ありがとうございます」
「何、お礼を言うのはこっちだよ。また来ておくれね」
「はい、じゃあ」
店の店主に手を振り返し、お礼にもらったアイスキャンディー二つを持ってリアラは店を出る。
(買ってすぐに戻るつもりだったのに、遅くなっちゃった…)
夕食の材料を買い終え、二人で広場で一休みしていた時、リアラはふと馴染みのアイスキャンディーの店を思い出した。今の時期、自分が好きな苺がたっぷり入ったアイスキャンディーが売られていたはずだ。せっかくだからダンテの分も買ってこよう、そう思って彼に広場で待っててくれるようにお願いして店に来たのだが、店に来ると店主が何か困った様子で、尋ねてみるとアイスキャンディーを冷やしておく機械が壊れてしまったらしい。電気屋に修理を依頼したが来るのに一時間くらいかかると聞いて、それまでは冷たさが持つように魔法をかけてきたのだが、思ったより時間がかかってしまった。三十分は経ってしまっただろうか。
(早く戻らなきゃ…)
かけ足で通りを抜け、広場に入ったリアラはベンチに腰掛けていた影を見つけて声をかける。
「ダンテさん!」
「お、戻ってきたか」
「あ、おねえちゃん!」
「リアラおねえちゃんだ!」
子供達の遊び相手をしていたのか、顔を上げたダンテの近くには5、6歳くらいの男の子と女の子がいて、ダンテにつられてこちらを見た二人の顔がぱあっと輝く。
「すみません、お待たせしました」
「気にしなくていい。店のやつが困ってたのを手助けしてきたんだろ?」
「え、何で知ってるんですか?」
「こいつらが教えてくれた。リアラが遅れてくる時は誰かを手助けしてる時だ、ってな」
「リアラおねえちゃんはやくそくのじかんにおくれないんだよ!おくれたときはだれかこまってるひとをたすけてるんだよっておとうさんがいってた!」
「まえにぼくのいえにくるときにおくれたけど、そのときはしゅげいやのおばあちゃんのにもつはこぶのてつだってたんだよね!」
「だとよ」
「えっと…。…ありがとう」
どう返そうか迷っていたリアラは、ゆっくりと屈んで二人にお礼を言う。えへへー、と笑った二人にそうだ、とリアラは持っていたアイスキャンディーの一つを差し出す。
「二人のおかげでお兄ちゃんを心配させずに済んだから、お礼にこれあげる。二人で食べて」
「え、でもこれ、おねえちゃんのすきないちごでしょ?いいの?」
「ぼくたちはいいから、おねえちゃんたべてよ!」
「うーん…じゃあ、お姉ちゃんは一口だけもらうから、後は二人で半分こ!これでどう?」
「うん!」
「わーい、はんぶんこ!」
「あ、そうだ。ダンテさん、お先にどうぞ」
「ん?ああ」
ダンテがリアラからアイスキャンディーを受け取ると、リアラはもう一つのアイスキャンディーを袋から取り出し、パクリと口に含む。一口分食べた彼女は残りを二人に差し出す。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
「あっちでたべよう!」
キャッキャとはしゃぎながら二人は走っていく。手を振ってそれを見送ったリアラはダンテの隣りに腰を下ろす。
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