▽ そう呼んで 4
「相変わらず賑やかな町だな」
「この辺りでは大きい町ですからね。とはいえ、都心には及びませんけれど」
人の姿に戻ったダンテを連れて、リアラは町の中を進む。時間的にお茶を飲んだり、夕食の材料を買いに出ているのか、人が多い。
「リアラさん、こんにちは」
「雪の魔女さんじゃないか、元気にしているかい?」
「森の魔女さん、この前はありがとうね。助かったよ」
すれ違う人、店に立つ人がリアラを見ては挨拶をしたり、お礼を言ったりする。一つ一つに笑顔で丁寧に返すリアラに、ダンテは感心したように言う。
「お前に連れられて初めて町のやつらに会った時もそうだったが…好かれてるな、お前」
「昔からこうやってよくしてくれるんです。小さい頃にはたくさんかわいがってもらいましたよ」
だから、今はこうしてできることをしてお返ししているんです、とリアラは言う。町の人々と関わり、親しまれている魔女を何度か見てきたことはあるが、ここまで多くの人に好かれ、親しまれている魔女は珍しい。彼女の人徳なのか、初めて町の人々と会った時もすぐに自分を受け入れてくれた。ダンテが考えごとをしていると、自分を気遣ったのか、リアラが窺うように尋ねてくる。
「ダンテさんは賑やかなの、苦手ですか?」
「いや、むしろ好きだぜ。こうやって自分達に好意的なやつらが多いならなおさらいいな」
「そうですか、よかったです」
ほっと安堵の息をつくリアラに笑いかけ、で、とダンテは尋ねる。
「これからどこに行くんだ?」
「まずは薬草用の瓶を注文しに行って、それから食器を造っているお店に以前の木材の受け入れのお礼を言いに行って…最後に晩ご飯の材料を買いに行きます」
「わかった。じゃあ、行くか」
「はい」
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