▽ そう呼んで 3
「わぁ…!」
『どうだ?』
「何だか新鮮な感じがしますね」
いつも見ている風景のはずなのに、こうやってダンテの背に乗って飛んで、そうして見ている風景は何だかいつもと違って見える。
「気持ちいい…」
杖に乗って飛ぶ時より少し速い速度だが、吹き抜ける風が気持ちいい。少女のように声を弾ませるリアラにダンテは口元を綻ばせ、そうか、と返す。
『なあ、リアラ』
「はい」
『そろそろ敬語、止めないか?』
「えっ…」
突然の提案に戸惑うリアラに、ダンテは続ける。
『水汲みから帰ってきた時、微かにだがお前とルティアが話してるのが聞こえたんだ。その後すぐルティアが下りてきたから少し話してな。あいつには一週間もしない内に敬語で話すの止めたんだろ?俺をパートナーにして二週間…そろそろ敬語なしでもいいんじゃないか?』
「…敬語じゃない方が、いいですか…?」
『まあ、付き合いのあるやつや、今まで契約した魔女で敬語で話すやつはほとんどいなかったからな。そっちの方が慣れてるというか…お前みたいに契約してからも敬語で話しかけてくるやつは初めてだ』
「そう、ですか…」
『無理にとは言わない、お前の性格はこの二週間で何となくわかってきたからな。できたらでいい』
「努力、します」
『ああ』
頷いたダンテは見えてきた町に気づき、チラリとリアラを見やる。
『もうすぐで町に着くぞ、町の入り口でいいか?』
「あ、はい、お願いします」
『わかった』
少し速度を上げ、ダンテは町の入り口に向かった。
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