▽ 月の満ちる夜に 2
「ガキ相手に何してやがる!」
おおきなこえがして、めのまえがあかるくなる。めをあけたら、おおきいむしはいなかった。どこにいったのかさがしてたら、すこしとおいところにいた。いつのまにか、しらないひともいた。
「強い魔力を感じて気になったから来てみれば…小さいガキいじめかよ、胸糞悪ぃ」
『な、何だ貴様は!』
「テメーになんか教えねーよ。ガキいじめ辞めて出直してこい」
『い、言わせておけば…!』
おおきいこえは、あのおにいちゃんのこえみたいだ。おおきいむしはおこってるみたいで、からだがふるえてる。
『いいだろう、あの娘を食べる前に、まずはお前から喰らってやろう!』
「ハッ、できるもんならやってみな!」
おおきいむしがくちをあける。おにいちゃんがあぶない、そうおもってくちをあけたけど。
「遅え!」
いつのまにかおにいちゃんはおおきいむしのうしろにいて、おおきくあしをふっていた。おにいちゃんにけられたおおきいむしはとおくへとんでいく。おおきくじゃんぷしたおにいちゃんがおおきいむしのうえにのっかる。
「見た感じ『ブロンズ』、ってところか。一つだけ教えてやるよ。俺の階位は…『プラチナ』だ」
『プ、プラチナ…!?』
とおくにいるからか、なにをはなしているのかよくきこえないけれど、ぶろんず、ぷらちな、というのはきこえた。ぶろんず?ぷらちな?なんだろう?
「これでわかったか?わかったらとっとと消え失せろ」
『ヒ、ヒイイッ…!!』
おにいちゃんがなにかをいったら、おおきいむしははしってどこかへいってしまった。じっとみていたら、おにいちゃんがこっちにあるいてくる。
「大丈夫か?」
みあげたらおにいちゃんのかおがあって、おにいちゃんはしんぱいそうなかおをしていた。かあさまがしんぱいそうなかおをするときと、おなじかお。
「むねはくるしくないけど、まだすこし、さむい」
むねがくるしいのはなくなっていたけど、からだはまだつめたかった。そとはさむくないのに、さむい。
「さっきよりは収まったみてえだけど、まだ魔力が暴走してるみたいだな…」
どうしたもんだか…とおにいちゃんはいう。さむさでからだがふるえて、ぎゅっとめをとじる。
「仕方ねーな…」
なにかにおされて、ぶつかった。めをあけたけど、くらくてよくみえなかった。けど、あたたかかった。
「これで温かいか?」
すぐちかくできこえたおにいちゃんのこえに、おにいちゃんがぎゅっとしてくれてるんだってわかった。うん、ってこたえたら、あたまをなでられた。
「もう怖いのはいないから、安心しろ」
「うん」
おにいちゃんのては、あったかい。とうさまやかあさまのてと、おなじ。ほっとする。こわくなくなったら、なんだかねむくなってきた。
「眠いのか?」
「うん…」
「寝てろ、しばらくこうしててやるから」
ぽんぽん、とせなかをたたかれる。おにいちゃんがいうなら、きっとだいじょうぶだ。ねむくて、めをとじた。
prev /
next