▽ 仕事以上の 7
「戻ったぞ」
姿を現したのは銀色の髪を後ろに撫でつけ、青いコートを着た青年だった。短く帰宅の意を告げた青年にルティアが声をかける。
「バージル!どこに行ってたの?」
「少し辺りを回っていただけだ」
簡潔に答え、バージルと呼ばれた青年はリアラ達のいるソファに近づく。バージルはリアラに気づくと、じっとリアラを見つめて言った。
「…そうか、彼奴等はお前を狙っていたか。珍しく多くの魔獣の気配を感じると思ったが」
「…っ!…私のせいでご迷惑をおかけしたようで、申し訳ございません」
「あんなもの迷惑の内に入らん。暇潰しにもならなかったがな」
深く頭を下げたリアラに素っ気なく返すバージル。少しの沈黙の後、バージルは再び口を開いた。
「…お前は、魔獣の血をひいているな。微かだが気配で分かる」
「…っ!」
一瞬、息が止まる。ああ、でも、とリアラは諦めたように目を閉じる。魔獣なら気配には鋭い、わかって当然か。だから、魔獣に狙われるのだから。
「…はい。あなたの仰る通りです。私は魔獣の血を、ひいています」
リアラの言葉にルティアは目を見開く。死神は静かに二人の様子を見ている。
「お前の名は?」
「『雪の薔薇』のリアラといいます。あなたはバージルさん…でしたね?」
「ああ。雪、ということはお前は俺と同じ属性だな?」
「同じ属性、ということはあなたも氷の属性なんですね。氷の属性でその気配の強さ…『蒼刃の魔獣(アスール・フィロ)』さん、ですね?」
「…なぜわかる」
「お話は聞いていますから。それに、私の記憶が間違っていなければ、氷の属性は私含め数人しかいません。私の父もその一人です」
「…そうか、お前はゼクスの娘か。どうりで研ぎ澄まされた気配をしているわけだ、納得した」
「……」
どう返したらいいかわからず、リアラは黙り込む。
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