▽ 月の満ちる夜に 1
「はぁ、はぁ…」
くるしい。くるしい。
「っ、はぁっ、はぁ…」
うまくいきができない。ぎゅっておされたみたいにむねがくるしい。
「…っ、っ」
さむい。まるでたくさんのこおりのなかにはいったみたいに、からだがつめたい。
「…っ!」
あしにちからがはいらなくなって、ころぶ。ひざからちがでてくる。もう、うごけない。からだにちからがはいらない。おうちに、かえりたい。
「とうさまぁ…かあさまぁ…」
さびしくて、なみだがでてくる。とまらなくなったなみだをてでふこうとしたら、めのまえがまっくらになった。
『見つけたぞ、ゼクスの娘』
かおをあげたら、からだのながいおおきなむしがいた。あかいめがこっちをみていて、さっきのことをおもいだして、からだがふるえる。
「あ、あ…」
おうちでおるすばんをしていたときに、きこえたこえ。おきゃくさんかなあ、とおもってどあをあけたら、おおきなむしが、いて。きづいたときにはおおきなくちがめのまえに、あって。
「…っ、っ…」
いそいでそとににげたけど、かみをたべられちゃって。うしろからよぶこえがきこえたけど、とまらないではしって。こわい。こわい。そうおもいながらいっしょうけんめいはしってたら、きゅうにいきがくるしくなった。からだが、つめたくなった。
『あまりの恐怖に魔力が暴走したか…。幼いとはいえゼクスの娘、魔力は凄まじいな』
ぼうそうってなに?いま、くるしいのはそれのせいなの?
『何、すぐに楽になる。…私が、お前を喰らってやるからな』
おおきなくちが、みえる。だんだんと、ちかづいてくる。こわくてうごけなくて、めをとじたとき。
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