▽ 仕事以上の 6
「……」
感じた気配に目を細める。ああ、またか。心が休まる暇もない。突然黙ってしまったリアラにルティアは首を傾げる。
「リアラさん?」
「すみません、ルティアさん。お話は少し待って頂けますか?…余計なお客様を、連れてきてしまったようなので」
この屋敷まではまだ距離があるが、移動速度から考えるに、数分もしたらここに着くだろう。外に出るために立ち上がろうとしたリアラを、静かな声が止めた。
「待て、お前が行く必要はない。…どうやら、ここに住む同居人が戻ってきたようだからな」
「え?」
理解できずに戸惑うリアラだったが、次の瞬間、すぐに死神の言葉の意味がわかった。
(!気配が、遠のいていく…)
こちらに向かっていた気配が弱まり、遠くへと去っていく。それと同時にこちらへと近づいてくる強い気配に、リアラは覚えがあった。
(この気配は…)
「私の言った通りだっただろう?」
死神の言葉が、リアラを思考の海から引き戻す。はっとしてリアラが死神を見ると、彼女は楽しそうに笑みを浮かべている。
「…はい。ただ、ご迷惑をおかけしてしまったようで…」
「何、彼奴にはいい暇潰しになっただろうよ。まあ、暇潰しにすらなっていないかもしれないが」
「え、何?何があったの?」
「全く…気配を感じないとしても、此奴の言葉で気づけ」
「ちょっと、ため息つかないでよ!何で私が悪いみたいになってるの!!」
「ルティアさん、私が説明します。…魔獣が、こちらに向かっていたんです。おそらくあと数分もしたらこちらに着いていたでしょう」
「え、嘘!?」
「こんな嘘をついてどうする。気配から察するに『ブロンズ』が五体、といったところだな」
「そうですね」
「え、でもリアラさんは何でわかったんですか?」
「それは…」
言うのをためらい、リアラが目を逸らした次の瞬間、部屋の扉が開いた。
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