▽ 仕事以上の 3
「えーっと…もう少し先ね」
紙に書かれた場所を確認し、リアラは前を向く。
キリエを介して依頼を受けた魔女と手紙でやり取りをして一週間、今日が約束の日。杖に乗り、空を飛びながら下を見やれば、広大な森が辺りに広がっている。
「私の住む森も広いけれど、ここはそれ以上ね…それでも希少な薬草が足りないのから考えると、生える薬草の種類はあまり多くないのかしら?」
自分の住む森は余程、植物にとって条件がいいところなのだろうか、そう考えていたリアラはふと、森の中を走る影を見つけた。
「あれは…」
遠くてよく見えないが、あれは馬…だろうか。森をすごい速さで駆けていくそれの後には氷の柱が点々と残っている。魔獣のようだ。
「強い魔力…『プラチナ』、かしら」
ここまで魔力が伝わってくるなら、おそらく相当の実力者だろう。だが、『プラチナ』はあまり常界では見かけない存在なのだが…。
「悪さをするようには見えないし、いいか。今は仕事を優先しないと」
どんな魔獣であれ、常界に出てくる可能性はあるのだから。そう考え、再び前を向いたリアラは、少し先に大きな湖と館を見つけた。
「あった、あれね」
少し速度を上げて、リアラは真っ直ぐに館に向かう。建物の前に着くとゆっくりと足を地面に着け、軽く身だしなみを整える。
「きれいな湖…。すてきなところに住んでいるのね」
後ろにある湖は日の光を受けてキラキラと輝いている。いい薬草が採れそう、なんてつい仕事の考えになってしまう自分に苦笑し、リアラは目の前の建物に向かって歩き出す。
「遠くから見ても大きかったけど…近くで見ると本当に大きいお屋敷ね」
古いながらもしっかりした造りのそれは、長い歴史を感じさせる。大きな扉の前に立ち、コンコン、とリアラは扉をノックする。
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