▽ 仕事以上の 2
「私の友人に、ルティアっていう子がいるんだけど…リアラには何度か話したことがあるわね?」
「ああ、えっと…『白魔女(ソルシエール・ブランシュ)』さん、だったっけ」
知り合いではない魔女の名前を呼ぶのは何だか気が引けるので、リアラは別称で呼ぶようにしている。
そう、とキリエは頷く。
「彼女、色んな薬を作って人や魔女に配達する仕事をしているんだけど…今回、人から受けた仕事が貴重な薬草を使う物が多くて、仕事仲間にお願いしているけれど、足りていないんですって」
相手が困っている様子だから断れなかったらしくて…とキリエは言った。
「納品までにはまだ時間があるし、できる物は先に作っているらしいのだけど…中には時間のかかる物もあって、彼女、困っているの」
彼女のメモを書き写してきたのだけど…と、エプロンのポケットから紙を取り出し、リアラに差し出す。借りるね、と一言言い、リアラはその紙を受け取る。
「…わ、確かに貴重な薬草ばっかりだね…。月光草なんて、満月の夜にしか生えないのに…」
「やっぱり、リアラはわかるのね。私は薬草や薬に詳しくないから、こういうのはわからなくて…」
「うん、これは…大変そうだね。これ、全部足りてないの?」
「ううん、横に印の付いている物は足りているんですって。ただ、それでも足りない物が多いらしくって…」
「そうなんだ…。月光草は緊急用の予備があるから何とかなるけど、その他は採ってこないと…」
「引き受けてくれるの?」
「キリエの頼みだもの、断る理由がないわ。それに、困っている人がいるなら助けてあげないとね」
「ありがとう、リアラ。帰ったら早速ルティアに知らせるわ」
「うん。あと、その人に私の家の場所を伝えておいてくれないかな?手紙で会う日とか、詳しくやり取りしたいから」
「わかったわ。伝えておくわね」
「よろしくね。ねえキリエ、まだ時間はある?よかったらもう少し話したいな」
「ええ、構わないわ。ふふ、こうやってゆっくり話すのは久しぶりね」
「そうだね」
お互いに笑いあった二人は、たわいもない話を楽しんだのだった。
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