▽ 仕事以上の 1
コンコン、と控えめなノック音が響き、玄関の扉を開けたリアラは笑顔を浮かべる。
「いらっしゃい、キリエ。どうぞ、中に入って」
「お邪魔します」
「紅茶でいいかな?」
「ええ。そうだ、リアラにマドレーヌを作ってきたの、よかったら食べて」
「本当?ありがとう。じゃあ、紅茶と一緒に食べよう。今、お皿を用意するね」
キリエからマドレーヌの入ったバスケットを受け取り、リアラはキッチンへ向かう。十分程経って、リアラはマドレーヌの乗った皿とティーセットをトレイに乗せ、リビングへ戻ってきた。
「お待たせ。はい、どうぞ」
「ありがとう。いただきます」
白いティーカップを受け取り、キリエは静かに口をつける。
「美味しいわ。やっぱり、リアラの淹れる紅茶は美味しいわね」
「そう言ってもらえると嬉しい。私もキリエの作ったマドレーヌ頂くね。…わ、美味しい。茶葉を入れてるの?」
「ええ。リアラ、紅茶が好きでしょう?だから、今日は茶葉を入れたマドレーヌにしてみたの」
「嬉しい、ありがとう!」
「どういたしまして」
和やかな会話を交わし、二人は紅茶を楽しむ。
カチャリ、とソーサーにカップを置き、リアラはキリエに尋ねた。
「それで、お願いがあるって聞いたけど…何かあったの?わざわざ家に尋ねてくるなんて…」
何か大変なこと?と聞くと、キリエは笑って首を振った。
「少し話が長くなりそうだし、こちらからお願いすることだからここに来たの。仕事の方でのお願いになるんだけど…」
そう切り出し、キリエは話し出した。
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