▽ 気遣いの意味 6
「動きやすさを考えたらこっちの方がよさそうだし…こっちにしようかな」
「じゃあ、このデザインでいいかしら?」
「うん」
リアラが頷くとキリエは注文用の書類に羽ペンを滑らせる。コートの写真が載った見本を片付けると、今度は色の見本を取り出す。
「この素材だとこんな色があるけれど…」
「わ、たくさんあるんだね。どれにしようかな…」
キリエから提示された見本に目を通していると、採寸が終わったのか、ダンテとネロが部屋に入ってきた。
「採寸終わったぜ。キリエ、後は頼んだ」
「ありがとう、ネロ」
肩幅や胴回りなど細かく書き込まれた紙を受け取り、キリエは頷く。
「コートのデザイン、どこまで決まったんだ?」
「コートの型は決まったわ、後は色を決めるだけよ」
「そうか。まだ仕事の最中だろ、決まり次第俺が聞いておくからキリエは店に戻っててくれ」
「わかったわ、ありがとう」
ネロに一言礼を言うと、キリエはリアラに仕事に戻ることを伝えて部屋を出て行く。ダンテとネロはリアラの邪魔にならないように、壁側に置いてあった椅子に座って様子を見ることにした。
「だいぶ悩んでるな」
「自分のことよりか他人のことで悩むやつだからな、リアラは。それにパートナーのあんたが着る物なら余計に悩むだろ」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ」
首を傾げたダンテにそのまま言葉を返したネロは、何かを思い出したのか、昔話を始めた。
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