▽ 気遣いの意味 4
「私は働いてお金を稼いでくれることよりも、私を気遣って何かをしてくれることの方が嬉しいわ。ダンテのその気持ちが嬉しいの。だから、今のままでいいのよ」
どうしても厳しいっていう時は働いてもらうかもしれないけど、とリアラは苦笑する。
「それとね、私に遠慮なんかしなくていいんだよ。前にダンテも私にそう言ってくれたでしょう?」
以前、彼は迷惑だなんて思ったことは一度もないから、必要な時は甘えればいいし、頼ればいい、と言ってくれた。遠慮なんかいらない、と。それは、自分も同じなのだ。
「だから、ダンテも何か必要な時は私に言って、私に話して。私はダンテのパートナーだもの、遠慮しなくていいんだよ」
「リアラ…」
「朝からこんな話しちゃってごめんね、ご飯食べようか」
わざわざ食事の手を止めてまでこんな話をしてしまったことに申し訳なく思い、リアラは一言詫びてから止めていた手を動かし始める。何となく気まずくて、テーブルに視線を落としたままオムレツを口にしたリアラの頭に、ゆっくりと何かが乗せられた。今まで何度もあったこの感覚にダンテの手だとわかり、リアラは顔を上げる。柔らかく細められたアイスブルーの目が、こちらに向けられていた。
「ありがとな、リアラ。俺も、そう思ってくれるお前の気持ちが嬉しいよ」
「ダンテ…」
大きくて温かな手が頭を撫でる。整えた髪を乱さないように優しく往復するその動きは、彼が自分を大切にしてくれていることが伝わってくる。
「せっかくだ、その言葉に甘えさせてもらうとするかな。…コート、頼めるか?」
「!…うん!」
いつもいろいろと助けてもらっている彼の役に立てて嬉しい。明るい笑顔を浮かべたリアラにダンテも優しい笑みを返す。
「で、どうするんだ?町に買いに行くのか?」
「ううん、キリエに頼もうと思って。キリエは私達魔女の服だけじゃなくて一般の人達の服も作ってるから」
「ああ、なるほどな。嬢ちゃんならコートも作れそうだ」
「キリエは服ならいろいろと作れるよ、細かい希望でも聞いてくれるし、着心地もいいし。私はキリエの服好きだな」
「そうか、きっとその言葉を聞いたら嬢ちゃん喜ぶだろうよ」
和やかに話をしながら食事を進める。パートナーの話に耳を傾けていたダンテは、ふとあることを思いついた。
「なあリアラ、コートを作る時に一つ頼みがあるんだが、いいか?」
「頼み?」
こてりと首を傾げたリアラに、ダンテは楽しそうな笑みを浮かべて口を開いた。
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