▽ 気遣いの意味 3
「…なあ、リアラ」
名前を呼ばれたリアラが顔を上げると、優しい顔でダンテがこちらを見ていた。
「俺はそうしたいと思ってやってるだけで、無理なんてしてない。まあ、さっきのやつみたいにお前の負担になるかもしれないと思って断る時もあるが、俺がお前のことで負担に感じたことなんて一度もない」
「……」
こちらを見る澄んだアイスブルーの目に、嘘偽りは感じられない。声もいつもと変わらず、彼が本当のことを言っているのだとわかる。リアラもゆっくりと口を開く。
「…さっきのやつって、コートのことだよね。ダンテが私の負担になると思ってるのは、お金のこと?」
「まあ、そうだな」
ダンテは頷く。少し躊躇いながら返された言葉に、リアラはダンテの心の内を察した。
「ダンテは自分が働いてお金を稼いでないことで私に負担がかかってると思ってるんだね。けど、私は一度もそんなことを気にしたことはないよ」
その言葉に、気まずそうに視線を逸らしていたダンテは驚いた顔でリアラを見る。
「働いてお金を稼ぐことも生活するためには大切だよ、けれど、私がやっている仕事で生活ができているならそれで充分なんじゃないかな?」
「そうは言っても、一人より二人の方が金銭面で確実に負担は増えてるだろ?」
「一人より二人の方がお金がかかるのは当たり前だよ。それに、ダンテは何もしてないわけじゃないでしょう?私が薬草の配達に行く時も魔獣の捕獲の仕事に行く時も必ずついてきてくれるし、家では生活に必要な水を汲みに行ってくれてる。今日は暖炉にくべる薪を運んでくれた。こんなにたくさんのことをしてくれてるじゃない、私はそれで充分よ」
「……」
「…ねえ、ダンテ」
先程の彼と同じ顔で、同じようにリアラはダンテに声をかける。
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