▽ 覚えることはまだまだある 24
「はい、どうぞ」
「お、ありがとな」
夕食を終え、リビングでくつろいでいたダンテは横から差し出された物に手を伸ばす。受け取ったカップから湯気と共に甘い匂いが立ち上る。
「ココアか」
「うん、最近寒くなってきたし、たまにはいいかなって」
「そうか。…うん、美味い」
「よかった」
にこっと笑ってリアラはダンテの隣りに座る。
「いろいろとあったが、勉強会、上手くいってよかったな」
「ありがとう、上手くできるか心配だったけど、無事にできてよかった。ルティアもディーヴァも勉強になった、って言ってくれたし」
「お前があの二人のためにがんばった成果が出たんだろ。何を教えるかって毎日考えてたもんな、お疲れさん」
「…うん、ありがとう」
労いの言葉と共に頭に乗せられた手が温かい。リアラは目を細めてお礼を言う。
「前に行った勉強会ではチビ共の相手をしててお前が教えてるところを見られなかったからな、新しい一面が見られて面白かった」
「そう言われると何だか恥ずかしいな」
「いいじゃねえか、なかなか様になってたぜ?お前は教えるのに向いてるんだろうな」
「そうかな?…でも、そう言ってもらえると嬉しい」
ありがとう、ダンテ。照れながらもそう言った彼女の笑顔が愛しい。自分も笑顔を返し、さて、とダンテは話を切り出す。
「せっかく勉強会をやったんだし、俺にも何か教えてくれるか、先生?」
「…え?」
先程の優しい笑顔とは一転、悪戯っ子の笑みを浮かべたダンテにリアラはぱちくりと目を瞬かせる。
「お前は色んな魔術を知ってるだろ、俺にも何か一つ教えてくれよ」
「え、でも、ダンテの方が年上でいろいろと知ってるのに、私が教えるなんて…」
「いいじゃねえか、気にするなって。魔獣と魔女で使う魔術が違うなら、俺達魔獣が使わないような魔術があるかもしれないじゃねえか」
な、教えてくれよ、と頼んでくるダンテの目は好奇心に満ちた子供のようだ。うーん、としばらくの間悩んでいたリアラは何かを思いついたようで、ようやく口を開く。
「道具を使わずにこの場でできる魔法なら一つあるけど…」
「お、本当か?」
「うん」
頷き、リアラはその魔法の説明を始める。
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