▽ 覚えることはまだまだある 20
「あたし達魔女は自分の身を守るために結界を張ることがあるけど、ダンテ達魔獣ってあんまりそういうことしないよね。必要ないってこと?」
「ディーヴァ、それ質問になってるよ」
「あ、そうだね」
ルティアからの指摘にえへへ…と笑うディーヴァ。リアラはそうね、と頷きながら自分の意見を述べる。
「確かにダンテ達は防御のために魔力を使ったりはあまりしないわね、私が仕事で戦った他の魔獣達もそうだし。けど、ダンテ達魔獣の場合は必要がないというよりも、攻撃に重きを置いているんじゃないかしら?」
どう?とリアラがダンテ達魔獣組に問いかけると、三人はそれぞれ頷く。
「そうだな、俺達魔獣の住む魔界は実力主義の世界だ、防御に重きを置いていては上には上がれない。力を攻撃に特化させるのはごく自然の事だろうな」
「一番下の『ノーマル』でもそういう奴はいねえからな。戦闘を避けるために他の魔獣の気配を察知するのに長けた奴ならいるけど」
「自分の身を守ると言っても、武器で相手の攻撃を防ぐくらいしかしてねえしな。たまに魔術を使って防ぐこともあるが」
「じゃあ、結界を張ったりするのは魔女だけってこと?」
「まあ、オレ達魔獣でもできなくはないけどやる機会はほぼないな」
「結界に魔力を使うくらいなら攻撃魔術に使うって奴がほとんどだろうしな」
「そうなんだ…」
頷くディーヴァの向かいで今度はルティアが三人に尋ねる。
「ねえねえ、そういえば三人は兄弟で共通して闇属性持ちだよね、さっきおじさんが魔術を使って防ぐこともあるって言ってたけど、同じ闇属性でも使った時の魔術の形って違ったりするの?」
「あー、魔術の形な。そうだな、それぞれ違うぜ」
頷くと、ダンテは説明を始める。
「通常、光や闇属性っていうのは決まった形がないのは知ってるな?だが、俺達のようにもう一つの属性を持ってると、それが影響してある程度の形として現れるようになるんだよ。バージルだと氷属性だから氷柱、若だと炎属性だから炎、俺だと木属性だから植物の蔓、って感じにな」
「へー、そうなんだ」
「でもダンテ達って闇属性の魔術はあまり使わないよね。ダンテが魔法陣から闇色の球出してるのは見たことがあるけど」
「あー、まあな。時々使うこともあるけど、もう片方の属性魔術で充分だし。組み合わせて使うこともなくはないけどな」
「そうなんだ。やっぱり強いんだね、ダンテ達…」
「当然だろ?」
「ドヤ顔すんなよ。けどまあ、褒められるのは悪くねえな」
「…フン」
感嘆したリアラの言葉に三人それぞれバラバラの反応を見せたが、悪い気分ではないらしい。バージルも鼻を鳴らしつつも眉間に皺は寄っていない。
「あたしからは以上です。というかこれで勘弁してください…」
これでいっぱいいっぱいですとでも言いたげにこちらを見るディーヴァに死神はまあいいだろう、と頷く。
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